鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

スペイン滞在記 <54>

 

スペイン滞在記(2011年4月4日〜5月18日) <54>
2011年5月13日「お隣りさん」
 


羊子の住む家のお隣りさんが、羊子の家族と共にお茶を飲みたいから、ぜひおいでいただきたいと、かねがね招待されていた。それで、今日の10時30分ということにしてお邪魔したのである。私たち家族4人と同室のRMさんであり、招待してくださる方はロリーさんという82歳の婦人である。それに同じマンションの方でカルメンさんが加わった。この方は下の階にお住まいである。
 ロリーさんはお一人で生活しておられる。息子さんが三人おられ、それぞれ結婚されており、ロリーさんに一人で生活していないで、一緒に住むよう説得しているのであるが、一人の生活を楽しんでいると言うことである。年齢を重ねると、家の中が片付かないものだが、ロリーさんの家にお邪魔して、美しい室内には驚きであった。いたるところに絵が飾られ、置物がきれいに並べられている。何もかもが整えられている。この優雅な生活には、そのお人柄が伝わってくるのである。物静かな方である。しかし、お話しはお好きなようで、いろいろとお話しされるのであった。クッキー、ドウナツの手作りとコーヒー等をいただく。



楽しく歓談


手作りのお菓子



 ロリーさんは羊子のコンサートにはよく来てくれるそうである。羊子は家にいるときはラフな格好をしており、演奏の時にはそれなりの衣装を着るので、別人みたいだと言われたとか。お連れ合いは既に召天されており、その写真が掲げられてあった。写真と言えば、お子さん達やお孫さんたちの写真がいろいろと飾られている。息子さんがカメラ関係の仕事をしているので、写真集をいくつかまとめられている。60代でヘリコプターに乗り、上空からバルセロナのいろいろな景色を写し、それを息子さんが写真集にしている。一見、優しくおとなしく見えるが、度胸のある方なのである。
 


ロリーさんの家から見えるサグラダ・ファミリア



連れ合いのスミさんは朝7時頃、朝日が昇ってくる頃であるが、リビングからサグラダ・ファミリアを眺めている。その頃は他の者はまだ寝ているのであるが、スミさんは目覚めが早く、今では朝日のサグラダ・ファミリアを見つめることを楽しみにしている。朝日の中に映える教会は大変美しいと言っている。朝日がさすと、サグラダ・ファミリアの工事の人たちが働き始めるのである。高いクレーンが動き出す。中には高い工事現場をよじ登っていく人たちを遠くに見るのである。家からサグラダ・ファミリアまでは100m強くらいである。お茶をいただきながらスミさんがそんなことをお話しすると、ロリーさんも、やはり朝日を見つめ、工事現場の人たちを見つめているのだと言われる。そこで話しが一致して、しばし工事の具合等について話し合うのである。ロリーさんは双眼鏡でも教会や工事状況を眺めているともいわれている。
 ロリーさんは2歳の時にこの家に住むようになり、80年間、サグラダ・ファミリアを目の前に見つめながら過ごしてこられたのである。サグラダ・ファミリアの変遷をしっかりと記憶にとどめながら、今日を生活されているのである。部屋には日本でいう大きな柱時計があり、今でも時を刻んでいる。時刻ごとにかなり大きな音色の鐘がなる。こんなに大きな音では眠られないのではないかと思うのであるが、もう慣れているので安眠中であるとも。
 お友だちも来られたがカルメンさんと言う。この方は、私たちが羊子の家に来てから間もなく、下の階にお住まいであるが、わざわざご挨拶に来て下さっているので、既にお会いしている方である。この方の息子さんが、羊子の使わなくなっているパソコンにインターネットを接続してくれたのである。お蔭でそのとき以来、ネットで日本の状況を知ることが出来るようになった。このカルメンさんに、羊子が飼っている犬が子どもを産んだのであげたという。名前はガラだとか。息子さんがインターネットを接続しに来てくれた時、そのミニピンシャのガラも一緒に来て、皆からかわいがられていた。
 ロリーさんの家に招かれて、2時間ほど歓談してお別れした。羊子は同じマンションの皆さんにも親切にお付き合いいただいており、親としても嬉しく思っている。こちらの皆さんが羊子を大事にしてくれているのである。