鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

スペイン滞在記 <69>

 

スペイン滞在記(2011年4月4日〜5月18日) <69>
2011年5月31日「遥かなるバルセロナ(8)」
 


4月4日から5月18日までの45日間、スペイン・バルセロナでピアノの演奏活動をしている娘の羊子のもとで過ごした。45日間を70回に分けて滞在記として記すことになった。バルセロナに渡ったのは観光が目的ではなく、娘の羊子を訪問することであったことについては、既に記している。羊子に関わる皆さんが、羊子の家族が来たという訳で歓迎してくれたことも記している。暖かい皆さんとの触れ合いだけでもバルセロナ訪問の意味があった。せっかく来たのであるからと、観光案内を買って出る方もおられ、おかげでバルセロナの観光地巡りをすることができたのである。スペイン人、日本人、そして他のどこの国の人々も、人間の基本的触れ合いは同じである。相手を受け止め、心を開いて交わる、そこに人間の生きる姿があるのである。今まで日本基督教団総会書記の職務の中で、いろいろな国々の皆さんとの触れ合いをした。いずれもキリスト教関係の協議会である。スペインはカトリックの信仰が根本にあり、その土壌のもとに人々の触れ合いが導かれているのである。
 羊子はピアノの演奏活動をしているが、私たちが45日間の滞在中、6回の演奏会に出演している。3回は日本の東北関東大震災復興協力コンサートであり、3回はそれぞれの主催者が企画してくれたものである。まず4月6日に「東北関東大震災被災者救済協力コンサート」が学校の講堂を会場にして開催された(4月6日のブログ参照)。マドリッドのインマヌエルバプテスト教会を会場にして「東日本大震災義援金チャリティーコンサート」が開催され、演奏している(5月7日のブログ参照)。そして、カタルーニャ音楽堂で日本の東北関東大震災救援のためのコンサートが開かれた。スペイン語のプログラムに「がんばれ日本」と日本語で書いてある(5月16日のブログ参照)。このチャリティーコンサートの他にそれぞれの企画でコンサートが開催されている。一つはバルセロナから飛行機で1時間を経たブルゴスの街で開催されたのである(5月6日のブログ参照)。また、高級リゾートマンションでも羊子のピアノ演奏会が開催された。いわゆる老人ホームであるが、皆さんが喜んでくれた(4月26日のブログ参照)。そして、羊子が奏楽奉仕しているカトリック教会でコンサートが開催された(5月14日のブログ参照)。私達の滞在中6回のピアノ演奏コンサートを開催しているが、私たちが行く前、帰ってからも、チャリティーコンサートがあり、また企画されたコンサートでピアノの演奏会をしているのである。
 このように記すと、スペインがいかにも音楽の盛んな国に思えるが、そうではないという。羊子によれば、スペインも不況のため、音楽事務所もこまっているということである。多くの事務所が閉鎖したとか。また、バルセロナ音楽学校も生徒不足で、この一年で30%の音楽学校が閉鎖したということである。音楽家、ピアノの先生は有り余っていて、仕事がない状況であるという。そういう中で、羊子がピアノの演奏活動ができるのは、神様のお恵みとお導きであると羊子は述べている。
 

音楽店「ベートーベンの家」。ショーウインドウの左下に
羊子のCDが。見えるかな。次の写真参照。



左下に羊子のCDが置かれている。





バルセロナは芸術の街であり、どこかに見学に出かけなくても、雰囲気が漂っている。なにしろ外を見れば目線の高さにサグラダ・ファミリアがあるのである。連れ合いのスミさんは朝日が上る頃からサグラダ・ファミリアを見つめている。暗い中から、朝日と共に浮かびあがって来る教会に感動を覚える。そしてライトアップされる教会を見つめ、ライトが消える瞬間まで見つめることになる。このような感動の日々があり、「また行きたいね」と同じ言葉が出てくるのである。また行くことになるだろう。足腰が弱くなり、出かけることが困難になる前に、少なくとも、あと一回は行きたいと思う。羊子を家族のように愛してくれる皆さんに再び会うために。
 スペイン・バルセロナに生活しているうちにも、それぞれの生活習慣を知り、一つの考えに固執している私は、随分と変えられたと思うようになった。いろいろな人々の出会いが、私を新しい姿にしてくれるのであれば、今後も勇気をもって新しい出会いに向かっていくだろう。