鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

隠退牧師の徒然記<352>

隠退牧師の徒然記(2015年2月11日〜)<352>
2015年7月16日「この匂いが懐かしくて」


聖書の言葉
そのとき、マリアが純粋で非常に高価なナルドの香油を一リトラ持ってきて、イエスの足に塗り、自分の髪の毛でその足をぬぐった。家は香油の香りでいっぱいになった。
ヨハネによる福音書12章3節)


毎月第二日曜日は横須賀上町教会の礼拝の御用を仰せつかっている。聖餐式を執行するために赴くのであるが、その前に礼拝説教を担当する。2010年3月に大塚平安教会を退任した。そして、その4月から9月まで横浜本牧教会の留守番牧師として務める。10月からは無任所教師になったが、その10月から横須賀上町教会で月一回の説教を担当するようになったのである。同教会では礼拝が終わると茶菓のおもてなしをいただく。このひと時は何か懐かしい思いをもって臨むのであった。懐かしいというのは、そこに置かれている幼稚園児用の椅子である。良く匂いを嗅げばドレーパー記念幼稚園の匂いなのである。かつてドレーパー記念幼稚園が、園児用の机と椅子を新しくした。その時、今まで使用していた机と椅子の行く先が求められていた。それを知った当時の森田裕明園長が引き取りを申し出られたのである。どのくらい引き取ってくれたのか定かではないが、今でも使われていることで、懐かしく思うのである。毎月、第二日曜日に横須賀上町教会に赴くのは、皆さんと共に礼拝をささげる喜びであるが、ドレーパー記念幼稚園の匂いがする園児用の机や椅子にまみえる楽しみもあるのである。
実は、このドレーパー記念幼稚園の園児用机と椅子は、今も私の書斎に置かれている。年代的には資料が段ボールの中に入っているので、いつ頃のことであるかは記せない。在任中、子供たちの机や椅子が大分汚れているのが気になってくる。絵具、クレヨン、手垢等が目立つ様になり、この際、新しくすることを検討する。その頃、私は八王子医療刑務所教誨師の職務を担っていた。時々、矯正展が開かれていた。刑務所に服役する人の中には、専門家の職人がいると言われる。大工さんにしても、鉄工にしても技術者がおり、それらの人々が刑務所内で製作したものを販売するのである。全国の刑務所での作品を展示する矯正展は、一流の製作品が並べられている。一方、全国の矯正展と共に、地域の矯正展が開催される。八王子医療刑務所で開催されていた。一度、礼拝後に教会の数人と共に出かけたこともあった。刑務所で作られる製品を扱う団体があり、地域の矯正展に出かけては出店している。何回か革靴を購入したことがある。花瓶やお酒のぐい飲み茶碗等は記念にいただいている。
その様な関わりで、幼稚園の机や椅子を府中刑務所に発注することにしたのである。現在、使用している机と椅子を持って八王子医療刑務所教誨がある日に持参する。府中まで遠いので、府中刑務所の係官が取りに来てくれたのである。だいたい同じような机50卓、椅子100脚を注文する。府中刑務所が木工関係の製作をしていることを聞き及んでいたからである。その後、出来上がった机と椅子を届けてくれたのであるが、見本として渡した汚い机と椅子は見違えるほどに光輝いているのである。刑務所が汚い見本をきれいに磨いてくれたのである。その時点から、きれいになった見本の机と椅子は園長室に置かれるようになり、退任と共に記念品としていただいたのである。書斎に置かれている机と椅子が、いつもドレーパー記念幼稚園時代の思い出話をしているようである。
新しく出来上がった机と椅子を、もちろん子供たちは喜んでくれた。しかし、もう大分汚れてきているのではないかと思う。見本に出した机と椅子が、ピカピカに輝いたのであれば、製作してくれた刑務所に汚れ落としを発注しても良いのではないかと思うのである。また新しい机と椅子になるのである。
付け加えておくと、幼稚園を増改築したとき、既製の園児用パイプ椅子を購入し、ホールに備え付ける。合同礼拝が週に一度行われている。その場合、子供たちは自分の椅子をもってホールに集まってくるのである。木造平屋建てのホールの頃、年長組みは二階が教室であるが、やはり椅子をもって二階から降りてくるのである。ところが増改築となり、ホールが二階となったとき、年中や年少の子供たちが椅子を持って階段を上がって行くのは危険でもある。それで年中、年少組のために既製のパイプ椅子を備えたのである。80脚を備えたと思うが、その収納場所が問題なのである。そこで、椅子を積み上げて運ぶことのできる台車なるものを製作したのであった。今でもそれが使われていることを喜んでいる。
自分の書斎でもドレーパー記念幼稚園の匂いを嗅いでいるが、横須賀上町教会に行くたびに、ここでも幼稚園の匂いが嗅げる。しかも、ここでは昔ながらのままであるので、よけい懐かしさが募るのである。そんなにいつまでも横須賀上町教会の御用を続けるのではないので、今のうちに、思い切り匂いを吸い込んでおこうか…。



ドレーパー記念幼稚園の佇まい。10年前の2005年に撮影。
人々の希望の存在である。



教会のイベントの時、幼稚園のホールを使っているが、
子どもたちの机と椅子が楽しさを盛り上げる。



机と椅子は新しくしてから間もない時である。



古くなった椅子は我が家にも移動している。
庭の雑木を処理する時、楽に仕事ができる。
もっと雑木がないかと。