鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

バルセロナ滞在記「聖誕の門を仰ぎ見つつ」<55>

バルセロナ滞在記(2014年10月21日〜)<55>
2014年12月31日「ゆく年くる年



 「ゆく年くる年」はスペイン・バルセロナで体験することになった。スペインはキリスト教の国であり、クリスマスの喜びを持ち、共にお祝いした。そのお祝いはまだ続いているのであり、2015年1月6日まで続くのである。だから街のクリスマス飾りは外されてないし、商店にはクリスマスツリーが飾られている。その様にクリスマスは続いているのであるが、矢張り2014年が終わり、2015年が始まることは、喜びであり希望でもある。今日は12月31日である。この一年を振り返りつつ過ごしているであろうし、辛かった歩みへの思いもある。あるいは祝福の一年であったことを示されつつ歩む一日である。日本ではNHKが毎年、紅白歌合戦を行っているが、それが終わると「ゆく年くる年」と言う番組になる。紅白歌合戦はほとんど見ないが、この「ゆく年くる年」は見たい番組にもなっている。もっとも、この時間にはもはや寝ている場合が多いのであるが。だから日本の最近の「ゆく年くる年」の状況を知ることが無い。昔、随分と若い頃、まだ神学校にも入っていない頃であるが、いわゆる「除夜の鐘」を聞きつつ、それが終わると新年の挨拶をしたものである。テレビはお宮さんに押し掛ける人々、初詣の人々を放映している。そういうものを見ながら新しい年の実感を持ったものである。
 久しく遠ざかっていた「ゆく年くる年」をここスペイン・バルセロナで体験するのである。今年はスペイン・バルセロナに滞在しており、年末年始の習わしを体験しつつ新年を迎えることになる。「ゆく年くる年」の瞬間、すなわち12月31日の夜は家族で食事をし、新年を迎えたとき、合図と共に12粒のぶどうの実を食べることが習わしになっている。家族でその様な習わしができない人たちは、お互いに集まって今年最後の食事をするのである。私達家族をお招きくださる方があった。羊子夫婦と我々夫婦の四人であるが、羊子たちが親しくしているホアキンさん、通称マルケス(伯爵)さんが今年最後の夕食に招いてくださった。我々が間もなく帰国するので、お別れの食事ということも兼ねている。その他、ホセ・ルイス神父さんとカルミナさんも来られた。カルミナさんには12月28日に昼食を御馳走になっている。カルミナさんはお連れ合いを亡くされており、お子さんたちは家庭を持たれており、一人で生活されている。年齢は我々夫婦と同じであると伺っている。それからもう一人、インマさんもお出でになる。この方はカスタネットの名手で2012年に演奏を聞かせていただき、この様な演奏があることで驚いている。お一人で生活されているので、マルケスさんの夕食会に来られたのである。だから8人の皆さんで今年最後の夕食会を開いたのである。夕食は美味しいパエリアであった。スペイン生活も残り少なくなっているが、最後になってバルセロナ名物のパエリアをいただくことは感激である。さらに茹でた海老、肉がいっぱい入っているエビをいただく。夕食は午後10時30分頃から始めたのであるが、11時40分頃には終わる。後は12時を待つのである。コップの中に12個のぶどうの実を入れておく。今のうちにぶどうの皮をむいておくのである。そうでないと、食べるときには間に合わないということである。12秒で12個のぶどうを食べるのである。
 いよいよ12時の時刻になる。一同はテレビのある部屋に移動する。テレビはバルセロナ市内の広場を放映していた。それは、それは大勢の人々がこの広場に詰めかけている。みんなで新年を迎えるためである、みんなでぶどうを食べることが目的でもある。12時になったときカウントが始まる。1、2、3、4、…秒速に従ってぶどうを食べるのである。食べながら願い事を言うのだそうだ。だから皮をむいている時間はない。あっという間に12秒が過ぎてしまうのである。カウントが終わるとカヴァ(シャンパン)で乾杯をするのである。そして「フェリス・アーニョ・ヌエボ」(あけましておめでとう)と挨拶を行うのである。因みに「フェリス女学院」という学校があるが、スペイン語の「フェリス」であり、「祝福」の意味があるのである。広場にいる人たちは知人であろうが、知らない人であろうが、みんなで握手し、ハグし、お祝いを述べ合うのである。この辺りは日本には見られない情景である。大勢の人々が初詣に行くが、知らない人でも挨拶をして喜びあうということはない。スペイン人の人間性である。開放的であり、誰とでも心を寄せる。日本人にはない姿である。
これがバルセロナの「ゆく年くる年」である。街中の人が新年を喜びあっているのである。もはや1月1日になっているが、午前1時30分頃になって車で帰ってくる。バルセロナは都会であるので一晩中人通りは絶えないのであるが、「ゆく年くる年」はいつもより多くの人が歩道を歩いていた。新しい年を皆さんと共に迎え、家に帰る人たちなのであろう。テレビで見たあの大勢の人たちもこれから帰っていくのであろう。



ホアキンさんのお招きをいただき、2014年最後の食事をいただく。



食事はシーフードパエリアと大きなエビをいただく。



共に食事をいただいた皆さん。



ぶどうを用意してカウントダウンを待つ。