バルセロナ滞在記「聖誕の門を仰ぎ見つつ」＜２１＞

バルセロナ滞在記（2014年10月21日〜）＜２１＞
2014年11月12日「時には番外編」

　10月21日以来、スペイン・バルセロナ生活をしているが、何が物足りないかといえば、私自身の散歩が短いということである。わざわざ自分のために散歩はしていない。散歩をするのは犬の散歩なのである。日本での生活は毎日2時間の散歩であった。2時間も歩けば15000歩にもなる。歩数のカウントが楽しみで、携帯電話についている万歩計機能を見つめつつ生活していたのである。バルセロナに渡るにつけ、もちろん携帯電話は持参している。しかし、電話やメールが入ると結構な費用になってしまうと言うので、電源を切ったままである。本当はこちらに来ても、万歩計を楽しみながらの生活を考えていた。こちらで生活しているうちにも、犬の散歩をしたり、羊子と共にいろいろな場所へ出かけたりしているうちにも、万歩計は必要なくなってしまったのである。私がこちらに来て、あまり歩かなくなったことで、羊子やイグナシさんが、犬の散歩はなるべく遠くまで連れて歩くようにしてくれている。犬の散歩より人間の散歩を補充するためなのである。その心遣いをありがたく思っている。
　そんな心遣いから、散歩の番外編がある。今までも犬達の運動のためにも広い公園に車で連れて行っていたそうである。だから人間のためではないが、今日は車に20分も乗った広い公園にイグナシさんが連れて行ってくれた。羊子は仕事があり、スミさんは行かなかったが、三匹の犬たちと共に出かけたのであった。サンタコロマには先日もスミさんが広い公園に連れて行ってもらったが、今日は別の場所である。ローマ時代からの廃屋がある。広い高原である。結構ハイキングがてら訪れている人がいる。またサイクリングに来ている人たちもいる。高原から山の上を見ると十字架が立っているのが見える。昔、キリスト教が迫害された時代があったが、その時代に迫害で死んだ人々の墓地であると言われる。ローマ時代の廃屋も結構形が残っており、昔の人の生活がしのばれる。イグナシさんが、その時代の遺跡物があると言うので、地面を見つめながら歩く。いくつか昔のものと思われる石の欠片を拾っておいた。何の価値もないが、記念になるだろう。犬達も高原を走り回っていた。高台でもあり地中海が見える。
　家に帰ると羊子も仕事から帰ってきていた。帰りに買い物をしてきたと言い、新しい鯛とひこ鰯を見せるのであった。そして、今日は久しぶりに魚料理となる。今までも魚が出ないと言うのではない。鮭のムニエルや烏賊の料理等も出されている。烏賊の料理はイグナシさんがスペイン料理として作ってくれた。スペイン料理としての烏賊は油を多く使用しているので、日本人の口には合わないようだ。まずいとは言わないが、やはり烏賊は茹でたものが淡白でおいしいと思っている。烏賊と言えば2013年の3月から三ヶ月間、マレーシアで過ごしたことが思い出される。クアラルンプール日本語キリスト者集会のボランティア牧師として夫婦で赴いた。牧師館で過ごし、スーパーに買い物に行くが、魚類は売られていたが、何の魚だかわからない。唯一烏賊だけは分かり、時々烏賊を買っては茹でて食べていた。日本にいるときでも烏賊は茹でて食べている。あまり料理してしまうと烏賊の本来の味が消えてしまうようだ。
　さて今日は羊子が腕を振るって魚料理をしてくれた。鯛は一部をお刺身とし、あとはオーブン焼きとする。ひこ鰯はフライパンで焼いたものである。鯛は骨が固いので気を付けなければならないが、大きな鯛を豪快にオーブン焼きしているので、日本にいるときもこんな食べ方はしていない。おいしくいただく。そして鯛のお刺身も日本ではめったに食べない。日本にいるときはカツオかマグロのお刺身であり、ほとんど鯛のお刺身など食べない。そしてひこ鰯は小さいので、丸ごと骨まで食べられるのである。魚づくしで、日本にいるときでもこんなに豪華な食事はしていない。こちらでは毎日、肉の料理を食べているが、やはり日本人であるので魚が恋しくなる。時々スーパーに行き、魚屋さんを覗く。わざわざ覗くのは魚屋さんが使っている包丁が珍しいのである。出刃包丁と言うか、半月形の包丁は日本では使っていない。半月形の包丁を上手に使っている。魚屋さんのおばさんに写真を撮らせてもらう。魚屋ではこのような包丁を使うが、家では使っていないと弁解しているようであった。
　毎日の生活を喜んで居るが、やはりスペインであり、それなりの生活はしなければならない。そういう中で、時には番外編があることが喜びなのである。散歩にしても食事にしても、今日は番外編であった。

犬の散歩の高原に行く途中、不思議な水道局建物の横を通っていく。