鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

バルセロナ滞在記「聖誕の門を仰ぎ見つつ」<16>

バルセロナ滞在記(2014年10月21日〜)<16>
2014年11月6日「やりかけであっても」



 やりかけであっても、本人が手掛けたものは、本人の業績として残る。サグラダ・ファミリアはガウディが造ったものとして世界に知られているのである。しかし、ガウディの亡き後、その構想に基づいて製作している人々がいる。その一人が日本人の外尾悦郎さんである。外尾さんは建築、彫刻家としてサグラダ・ファミリアの完成に関わっているのである。現在、制作に携わっている人々が、どんなに優れた建築、彫刻を制作しても、全体的にはガウディの作品となる。その外尾悦郎さんのご案内をいただいて、去る10月23日にサグラダ・ファミリアの内部見学をしている。外尾さんと羊子が親しくしていることにもよるのである。その外尾さんは私を覚えていてくださり、私の散歩の途中、外尾さんは電話しながら歩いていたのであるが、私を見て手を上げて挨拶してくれたのであった。
 ところで今日はもう一つのガウディがやり残している建造物を見学する。朝、羊子やイグナシさんと街を歩いたのであるが、今日は快晴だし、コロニア・グエルを見学するよう羊子が勧めてくれた。それでスミさんと私はイグナシさんに連れて行ってもらう。車で30分くらいのところである。コロニア・グエルとは、ガウディのパトロンであるグエル氏の事業の繊維工場を中心にした工業団地を言うそうだ。工場で働く労働者たちが職場近くで住めるよう、広大な敷地内に家や学校などを建設する。そして、工業団地に必要だったのが教会であった。その製作をグエル氏はガウディに依頼する。設計工事は1908年に始まり、1914年には未完のままガウディが手を引き、現在に至っていると言われる。ガウディが手掛けて、しかし手を引いても、その後は弟子たちが街づくりをしたので、結局ガウディ的なコロニアになる。本人の遣り掛けであっても、今ではガウディの製作と思われているのである。ガウディが手を引いたのは、サグラダ・ファミリア製作のためであったのである。サグラダ・ファミリアにも展示されてあったが、コロニア・グエル教会のインフォメーションセンターに展示されている「逆さ吊りの構造模型」は驚きを覚える。これはガウディが生み出した構造設計であるが、錘を入れた小さな袋を多数、ひもで吊るしてアーチを作る。これによって建物全体のバランスを見ると言う。サグラダ・ファミリアは逆さ吊りだけの展示であったが、こちらのコロニア・グエルの展示は逆さ吊りの展示の下を鏡にしている。それにより逆さ吊りによる出来上がる形がわかるのである。本当に見事な設計であると思う。ガウディは逆さ吊り模型のために10年も費やしたと言われている。ガウディの不思議な曲線の建造物は、この逆さ吊りの設計によると言われる。
 コロニア・グエルの駅を降りるとインフォメーションセンターまで青い足跡のしるしが道路につけられている。足跡に従って歩けばインフォメーションセンターに着くのである。そこでコロニア・グエルの案内書がもらえる。日本語版もあった。結構、日本人も訪れているようである。しかし、我々が訪れたときは2、3人の人しか訪れていなかった。サグラダ・ファミリアのあの大勢の人々はこちらには来ないようである。そのため静かなコロニア・グエル教会を見学することができた。コロニア・グエル教会の見学を、ただ素晴らしかったと言うのでは後に残らないので、ここは案内書を引用しておこう。「コロニア・グエル教会見学のポイントの一つはポーチである。いくつものアーチから成る複雑な構造で、天井には十字架やローマ人がイエス・キリストを追跡するときに使ったと言われる魚、キリストを示すイニシャルなどがモザイクで飾られている。内部に入ったら自然光でキラキラ輝く七色の花柄のステンドグラスに魅了される。それに加え建物を支える柱を繋ぐ煉瓦のアーチ、それを補強するために放射線状にレンガを並べた天井など、素人にも一目瞭然な建築美が印象的である」と説明されているが、実際に見学して、その通りであることを体験する。
 礼拝堂のベンチもガウディのデザインであると言う。説明書にもある通り、花柄のステンドグラスは一部が開閉出来るようになっており、実際に開けられていた。モンセラットにある黒いマリアさんもおかれていた。この黒いマリアさんサグラダ・ファミリアにもおかれている。教会の横から屋上に上がることができ、そこからはコロニア・グエル一体を見ることができる。ここはサンタ・コロマの一角であるが、この地域はバルセロナの郊外でも名所が随分とあるようだ。



コロニア・グエル教会を背景に。



コロニア・グエル教会のたたずまい。



聖壇を背景に。



ステンドグラスの開閉窓。