鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

バルセロナ滞在記「聖誕の門を仰ぎ見つつ」<11>

バルセロナ滞在記(2014年10月21日〜)<11>
2014年10月31日「記念日を覚えつつ」



 早くも10月31日となり、バルセロナに滞在すること10日間となる。2011年に来た時は、何もかも初めての体験であり、心に強く示されて記録しておいた。それらは「スペイン滞在記」としてまとめている。2011年は3月11日に東日本大震災が発生し、4月4日から5月17日までスペインに向かうことを計画していたが、一時は行くか、止めるか思案したものである。しかし、予定通り決行する。一ヶ月半の滞在であったが、スペインでも日本の災害復興支援が叫ばれており、羊子も復興支援コンサートの演奏者として各地で活躍したのである。それはバルセロナばかりではなく、マドリッドにも行って復興支援コンサートでピアノの演奏をしたのである。翌年の2012年も二ヶ月間滞在する。既に経験済みであるので、それほどの強い印象を持たないで過ごしたが、2012年の場合はいろいろな人との出会いが多かったと思う。その様な多くの人々との出会いを与えられ、「受難の門」を見つめつつ過ごしたこともあり、「受難の門を見つめつつ」と題して記録を残している。そして今回の滞在は、何よりも羊子の結婚式のためであるが、その為、結婚式の日に懐かしい人々との再会が一度に訪れたのである。従って、今回の滞在は「再会を喜ぶ」ことが主題となると思う。
 再会を喜ぶことがあるが、定められていることを心に示される歩みもある。何よりも10月31日はプロテスタント教会にとって宗教改革記念日である。16世紀のルネサンス宗教改革を生み出しているのである。マルチン・ルターがカトリック教会に対して新しい信仰の持ち方を提唱したのが、この10月31日であった。それでこの日を宗教改革記念日としている。宗教改革はルターばかりではなく、カルヴァン、ツヴィングリ等、各地で新しい信仰を提唱するのである。実は今回のバルセロナ訪問で、もしかしたらスイスに行くかもしれなかった。スイスのプロテスタントの牧師が羊子と親しくしており、羊子のコンサートをスイスで開催することを提案されていた。だから我々夫婦も一緒に行くことにしていたのである。スイスはツヴィングリやカルヴァンの活動の拠点であり、いろいろな意味で宗教改革を示されると期待していた。ところがその牧師さん家族がフランスでバカンスを過ごしていたとき、息子さんがプールで水死する。この悲しい出来事でコンサートはしばらく延期することになったのである。スイスには行くことは無くなるが、10月31日を迎えて宗教改革者たちを示されたのである。
 スペインはカトリックの国であり、もちろん宗教改革記念日はない。しかし、カトリック教会として、かたくなにプロテスタントを拒否しているのではない。いつも心を開いているのである。14年前に羊子がバルセロナに渡り、最初に行ったカトリック教会では、プロテスタントの信者でもカトリック教会の聖餐は受けられないと言われてしまう。それで別の教会に出席し、聖餐が受けられるか尋ねる。その教会の神父さんはカトリック教会もプロテスタント教会も信仰は同じであり、共に聖餐を受けることを勧めてくれたのである。以後、その教会に出席し、ミサの奏楽を行うようになっている。考えてみればカトリック教会のミサにおいて、プロテスタント教会の信者が奏楽を行うこと、まさにエキメニュカルの取り組みである。そして、それがサグラダ・ファミリアにも波及しているのだから、大きな出来事なのである。羊子が住むマンションの人で、親しくしている老婦人がおられるが、サグラダ・ファミリアの役員をされておられるので、羊子を紹介してくれたのである。同教会の主任神父さんが受け止めてくださり、ここでもミサの奏楽をするようになっている。さらに、この度の結婚式にしてもカトリック教会の神父とプロテスタント教会の牧師が共同で結婚式の司式を行うことを提案してくれたのである。共に信仰を喜びつつ、それぞれの教会を担っているということである。結婚式ばかりではなく、翌日は26日の日曜日であり、ミサが行われる。午前9時からのミサで羊子が奏楽を担当するので我々も共に出席した。私の出席を知った神父さんは、最後の祝祷を私もするように求めたのである。カトリック教会において、プロテスタントの牧師がミサの祝祷をする。前代未聞であろう。私自身、すごい歴史を刻んだと思っている。宗教改革記念日に、プロテスタントの牧師がカトリック教会の中に招かれたと言うべきか。
 2011年以来、カトリック教会のミサに出席するようにしているが、随分と考えさせられている。早く言えば日本基督教団の教会における礼拝より進歩的であるということだ。ミサの中ではギターに合わせて歌われるし、信者が順次聖書朗読をしたり、聖餐式では会衆は左右、前後の人々と握手したり、ハグしたりして喜び合うのである。説教も長くても15分であり、いつもは10分程度である。従って、ミサの時間は40分、45分程度なのである。日本基督教団の場合は、30分も説教があり、全体的には1時間であり、長くなると1時間30分も要するのである。ギターに合わせて歌うことなんか考えられない。もっとも日本基督教団でも進歩的な教会はそのような取り組みをしていると教会もある。



サグラダ・ファミリアの礼拝堂で結婚式。
神父と牧師が共同司式を行う。



サグラダ・ファミリア、ミサの奏楽をする羊子。



羊子が14年前より出席しているパロキアの教会。



ここでもミサの奏楽をしている。