鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

隠退牧師の徒然記<298>

隠退牧師の徒然記(2013年7月20日〜)<298>
2014年10月18日「神の家族として」


聖書の言葉
あなたがたはもはや、外国人でも寄留者でもなく、聖なる民に属する者、神の家族であり、使徒預言者という土台の上に建てられています。
(エフェソの信徒への手紙2章19-20節)



 10月17日は支援しているシルバさん家族の裁判が東京地方裁判所で開かれ、連れ合いのスミさんと共に傍聴する。前回、8月28日にも裁判が行われたが、そのときは事務的な手続きであり、開廷して10分もしないうちに終わってしまう。今回は審問であり、原告であるシルバさんが審問に臨んだのである。午後1時30分から始まり、終わったのは4時を過ぎていた。予定では4時には終了であるのに、国側がいつまでも審問を続けようとしていたからである。それに対してシルバさんの弁護士は時間オーバーを指摘する。そして、次回の裁判の日程を確認して終了したのである。前回の8月28日の裁判については、翌日の29日のブログに記録している。重複するので、今回はあまり記さないが、要点だけを記しておこう。
 裁判が終わってから、休憩室に傍聴した皆さんが集まり、弁護士さんの説明を聞く。今回、傍聴した人は前回と同じ12名の皆さんである。弁護士さんは、まずそのことに触れ、シルバさんの裁判に傍聴者が多いということは、それだけ皆さんがシルバさん家族を支援しているということを裁判官に印象づけるために、とても大切なことであると言われる。審問では、弁護士さんがシルバさんと教会との関係を尋ね、教会の皆さんがシルバさんの立場をよく理解していることを確認したのであった。スリランカの政治事情と難民として日本に渡らざるを得なかったこと等を審問しつつ確認したのである。裁判の最後にシルバさんが裁判官に訴えたいことが許され、シルバさんは子どもたちのためにも日本に滞在したいこと、スリランカに帰れば身の危険があること等を述べたのであった。
 このブログを書いている10月18日の読売新聞は、一面のトップに「難民申請急増、就労目的か」との見出しで報道している。この問題を昨日、いろいろと考えさせられたこともあり、タイミングよく、この記事に接したのである。しかし、問題は今のシルバさんとは異なる報道であった。外国人が留学や研修で日本に滞在する場合に、短期のビザが出る。これらのビザを持つ人は一日4時間までのアルバイトが許可されている。しかし、これらの人が難民認定申請をして半年たてば、職種を問わずフルタイムで就労できるのである。そうなると留学や研修で来ているはずなのに、本格的に就労して収入を得る人が増えていることが問題視されているのである。日本語学校からは、留学生が難民認定申請をして本格的に働き始め、学校に来なくなったという苦情が寄せられていると言われる。また、職業技術を習得してもらう目的で、外国人を技能実習生として受け入れている農家や製造業者等から、「実習生がいなくなった。本人に連絡を取ったら、『稼ぎが増えるから難民申請をした』と言われた」との相談が相次いでいるという。現行の制度では、難民に申請されなくても、異議申し立てや再申請を繰り返せば、合法で就労できる立場を維持することも可能であると新聞は報じている。異議申し立ては、2010は668件であったが2013年の場合、三倍の2408件にも上っていると言われる。申請件数が多くなったので、審査機関の平均は、2011年度は5.25ヶ月であったが、最近は7ヶ月に伸びているという。それだけ申請者が有利になっているのである。
 これらの人々は何らかのビザを持っているのである。留学、研修の目的で短期ビザが与えられている。その上で難民認定申請をすることにより、審査機関も延びており、いろいろな方法で日本に滞在できるのである。ところが我々が支援しているシルバさん家族にはビザがない。当初から難民として日本に渡り、パスポートの期限も切れているので不法滞在者とされているのである。その場合、仮滞在保証人を立てることにより、しばらくは滞在できる。その仮滞在保証人を私が担っているのである。それは、今は裁判に訴えて在留資格を得ようとしているのであり、裁判の結審によりスリランカに帰らなければならない局面も出てくる。シルバさん家族は、日本に滞在することを切に求めているのであり、日本の国は心を開いて、諸外国の人々を受け入れてほしいと思う。難民で悲鳴を上げている国々があることも知っている。救いを求めて、声を上げているのである。読売新聞は、「生活支援を悪用」と報じているが、真実の叫びを聞かなければならないのである。



10月17日、シルバさんの裁判が地方裁判所で開かれ、
夫婦で傍聴する。



2012年3月25日にシルバさん家族が鈴木家を訪問する。