鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

隠退牧師の徒然記<226>

隠退牧師の徒然記(2013年7月20日〜)<226>
2014年1月17日「いつ読むのと問われつつ」


聖書の言葉
彼が王位についたならば、レビ人である祭司のもとにあるこの律法の写しを作り、それを自分の傍らに置き、生きている限り読み返し、神なる主を畏れることを学び、この律法のすべての言葉とこれらの掟を忠実に守らなければならない。そうすれば王は同胞を見下して高ぶることなく、この戒めから右にも左にもそれることなく、王もその子らもイスラエルの中で王位を長く保つことができる。
申命記17章18-20節)



書斎で過ごしていると、どこからともなく声が聞こえてくる。「この私をいつ読むのだ」と言っているようだ。書斎であるから書棚を置いており、多くの本が並べられている。それらの本が、私を見つめながら、一体いつになったら読んでくれるのかね、と言っているのである。大塚平安教会在任時代も牧師室の書架には、本が積まれていた。次々に増える本は、並べられている本の前に、今度は積むようにして本を置いているのである。そのため積まれた本によって、その後ろにある本がどんな本であるかわからなくなる。従って、持っている本なのに、また新たに購入してしまうこともあった。次々に増えてくる本の収納場所がなくて、段ボール箱に入れて、ソファーの下に置いたりする。牧師室では収納できないので、幼稚園の園長室にも置いていた。いよいよ大塚平安教会を退任する時、人間の移動より本の移動の方が大変であったわけである。それでも一年前より退任が決まっていたので、退任後住むことになる実家に行くたびに、段ボール箱に詰め込んでは運んでいた。退任する四年前に築65年にもなる木造の家を建て替えている。まだガラガラ空きの家のどこにでも置くことができた。そして2010年3月末に転居したのであるが、あちらこちらにおいてある本を入れた段ボール箱が邪魔になるのである。転居後は何よりも本の整理場所が必要であり、組立キッドの書棚をいくつか購入し、何とか本達を収める。しかし、どうしても書棚を置く場所がなく、この子達はがまんしてもらおうと、未だに段ボール生活を強いているのである。それらはベッドの下が格好の場所でもある。
牧師は学びと研鑽のために必要な本は揃えて置かなければならないと思っていた。キリスト教の専門書なので、公共の図書館にはないのである。いつでも必要な本をとりだしては牧会のために用いるのである。そのため神学生の時代から、貧しい神学生であったが、少しでもお金があると神学書を購入していたのである。今は読まなくても、将来は必要になるとの思いがある。加えて私の場合、日本文学に興味があったので、新潮社の「新日本文学全集」108巻を揃えたり、折口信夫全集、岩波講座「日本文学」全集を揃えたりしている。三木清全集、ドストエフスキー全集、カールバルト説教集、トレルチ著作集、他にも全集が書架に並んでいる。もちろん神学書、聖書注解書等を一覧にすれば枚挙にいとまがないほどである。
若い頃は日本文学に興味を示していたのに、今はヨーロッパの歴史に興味を持っている。地中海世界の歴史はキリスト教の歴史とも重なるので、結構楽しく読んでいるのである。これらの本を読みながらも、「いつ読んでくれるの」との声が耳を離れない。いずれは読んであげたい、なんて思っているのであるが。昨年3月からマレーシアで三ヶ月間過ごしたことでイスラムの世界に興味を示し、いくつかの本を読んでいる。岩波文庫の「コーラン」を購入したが、これは最初の部分を読んだにすぎない。昨年の10月に清水ヶ丘教会壮年会修養会の講師を依頼され、信仰に生きる姿をお話させていただいた。「イスラム、仏教を垣間見ながら」と副題を付けたので、仏教の高僧と言われる人々に関する本を読む。最澄空海法然親鸞栄西道元、一遍等についての著作を読むことになる。しかし、今は再び塩野七生さんの「ローマ人の物語」を再び読んでいる。塩野さんの著作に出会うのは、2011年4月から二ヶ月間、バルセロナにいる娘の羊子のもとで過ごしたが、そこにあった塩野七生著「チョーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」を読むことで、地中海世界の歴史に目覚めるのである。さらに「ルネサンスの女たち」も読み、これは一つ「ローマ人の物語」をぜひ読まなければならないと思った。そして帰国するや新潮文庫版の「ローマ人の物語」43巻を読破する。第一巻は2011年6月20日頃に読み終え、最終の43巻は2011年11月23日に読破する。約半年を要する。続いて塩野さんの著作である「海の都の物語」(ヴェネツィア共和国一千年)全6巻、「わが友マキアヴェリ」(フィレンツェ存亡)上下巻、「神の代理人」等も読むことになる。そして、今は再び「ローマ人の物語」を読み始めている。昨年の11月に第一巻を読み終え、今は15巻目を読んでいる。塩野さんにはまっている訳ではないが、地中海世界を舞台に繰り広げられる物語は、キリスト教の発展の経緯を興味深く示されるからである。特にローマ帝国として最初の皇帝になったアウグストゥスを人々が「平和の王」、「救いの王様」と称賛していた時にイエス・キリストが生まれ、世に現れるのである。そのキリスト教がどのようにローマを勝ち取って行ったかを知ることになる。
さて、もろもろの本の皆さん、君たちをどうするか。今は大きな課題になっている。まだ一度も頁を繰ってない本の皆さんには申し訳ないと思っている。読まないにしても、頁だけは繰ることにしようか。



書斎に置かれている本棚。



廊下の一角に置いている本棚。



ベッドの横に置いてある本棚。



同じくベッドの横にある本棚。