「受難の門を見つめつつ」・バルセロナ滞在記＜４７＞

「受難の門を見つめつつ」・バルセロナ滞在記（2012年9月10日〜11月6日）　＜４７＞
2012年10月29日、30日、31日「ラス・ルーナスのコンサート」

　バルセロナは寒波が来ており、大変寒くなっている。そのため29日、30日は散歩にも出ず、もっぱら家の中で過ごしていた。こんなに寒くなるとは思わなかったので、衣類も初秋程度の支度であり、羊子が知り合いからいただいた男もののカーディガンやセーターを着ている。お連れ合いがなくなったので、衣類の整理をしているところであり、日本から両親が来ていることを知ってくださったのである。この寒さの中でありがたいことである。この時期にこれほどの寒波が来ることは珍しいと羊子も言っている。寒いのでヒーターを出して部屋を暖めている。どこにも出かけず、パソコンで文書を作成したり、写真の整理をして過ごしたのであった。

ラス・ルーナスにおいてピアノコンサート。

コンサートを主催した皆さんと。

コンサート後はお茶のひととき。

　31日はサンクガットにある「ラス・ルーナス」という高級老人ホームに行く。そこで羊子がピアノのコンサートを行うからである。このラス・ルーナスには昨年4月、5月にバルセロナに来たときにも、羊子のピアノのコンサートが開かれ、そのときは星子も一緒だったので、三人が羊子に連れられてきている。まさに高級老人ホームであり、現役の頃は社長とか高い位置にいた人ばかりであり、いわゆるお金持ちが入るホームである。そこで、羊子は何かと呼ばれては演奏をする。他の楽器を奏する人も伴い、演奏していると言う。最初に、コンサートではシューマン、ショパン、アルベニス、ファリァ等を弾く。その後、このホームの住人で羊子とも親しくしている人の作曲をピアノで弾く。そして、その後に羊子は私たち夫婦も引っ張り出す。もう既に皆さんに披露している日本の童謡「ふるさと」と讃美歌54年版158番「あめには御使い」（ベートーベンの第九の一節）をハーモニカと独唱をピアノの伴奏で行う。思わぬ余興で皆さんは喜んでくださった。その後はカタルーニァの歌を弾き、皆さんもピアノに合わせて歌うのであった。老人の皆さんで大きな声では歌わないが、皆さんは喜んで歌っていた。
　ところでこちらでは11月1日は「聖人の日」とされており、休日になる。「聖人」すなわち召天者を覚える日なのである。10月31日はその前の日、前夜祭と言うことになる。前夜祭には、特別な行事をするわけではないが、「聖人の日」を覚えながら語らうようである。まず小さなサンドウィッチ、こちらのコロッケ、小さなケーキが出される。次にサツマイモを焼いたもの、いわゆる焼き芋である。こちらのサツマイモは薄紫色である。そして焼き栗が出される。前夜祭にはサツマイモと焼き栗を食べるのが慣わしであるとか。カヴァを飲みながらいただき、歓談するのである。ある程度の歓談の後、羊子が再びポピュラー曲を弾きだすと、数人の皆さんがピアノの周りに集まり、マイクを手にして歌うのであった。まだ若々しい人もいる。コンサートは「聖人の日」前夜祭としての催しであるようだ。

簡単なサンドウィッチ、スペイン風コロッケが出される。

「聖人の日」には焼き芋を食べることになっているとか。

「聖人の日」には松の実のお菓子を食べるとも。

　「聖人の日」を示されたとき、日本基督教団は11月の第一主日を「聖徒の日」（永眠者記念日）と定めている。大塚平安教会では「召天者記念礼拝」としていた。次の日曜日、11月4日になる。当日は教会員として召天された皆さんの写真を飾り、信仰に生きた証を示されながら礼拝をささげる。もうかなりの皆さんが写真たてに並べられているので、一人一人の証は紹介できないが、例えばこの年に召天された方があるならば、葬儀でもお証は示されているが、改めて証を示され、私たちの信仰の導きとさせていただいているのである。この写真たては、今は沖縄にお住まいである渡辺魁さんが作ってくださったものである。当初は私が木材を組み合わせて写真を飾っていたが、次第に召天者が増え、いい加減な木材の写真たてでは持ちこたえられなくなったのであった。それを見かねて渡辺さんが作ってくださったのである。まもなくクリスマス待降節になるが、窓にステンドグラスを取り付ける時期になる。その枠組みを作ってくれたのも渡辺魁さんである。新会堂ができると、ステンドグラスが使えなくなるので残念なことである。召天者記念礼拝には召天された皆さんのお名前をプリントして皆さんにお渡ししているが、自宅にはそのプリントを掲示しており、いつも召天された皆さんとのお交わり、信仰のお証を示されているのである。召天された皆さんをこのバルセロナでも示されたい。