鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

「受難の門を見つめつつ」・バルセロナ滞在記<10>

「受難の門を見つめつつ」・バルセロナ滞在記(2012年9月10日〜11月6日) <10>
2012年9月19日「ローマを訪ねる(2)」



 さて今日はヴァチカンめぐりである。朝10時頃にホテルを出て、途中のカフェテラスで朝食を取る。ヴァチカンに入るには、おそらく長蛇の列と思っていたが、誰も並んでいない。そのまま入り口に行っても並んでなく、すぐに入場券売り場に行く。正式にはヴァチカン市国であり、イタリア・ローマの中にある一つの国なのである。車椅子の本人と介助者は無料であり、一人分の15ユーロで入ることができた。ありがたいことである。まずヴァチカン博物館を見学する。この博物館をすべて見学すると5時間はかかる。最低でも1.5時間を要する。とにかく主要と思われる展示物を見てまわる。「プリマ・ポルタのアウグストゥス帝」、「ヴェルヴェデーレのアポロ」、「ラオコーン」を見ながら、天井を仰げば、そこにも名画が描かれている。どこを見ても聖画と彫像の数々で、一つひとつ鑑賞するどころではない。「ラファエロの間」に掲げられている「聖体の論議」の圧巻を見る。ラファエロ自身が小さく描かれ、彼一人が鑑賞者を見ているのである。ヴァチカン美術館の最高傑作はシスティーナ礼拝堂である。ここは法王選挙であるコンクラーベが行われる場である。すべての美術に感嘆するが、ミケランジェロの天井画を仰いで見歩くとき、言う言葉がない。



ピーニャの中庭にて。背景はエジプト美術館。
見えなくなっているが「松かさの彫刻」が置かれている。



ミケランジェロ作「ピエタ」をしみじみと鑑賞する。



 ヴァチカンといえばサン・ピエトロ大聖堂である。世界最大の礼拝堂である。カトリック教会の総本山になる。ローマで殉教したペトロが埋葬されており、礼拝堂の中心にはペトロの像、ベルニーニ作の「聖ペトロの椅子」も荘厳に置かれている。ベルニーニの作品については、4月から7月まで横浜市大のエックステンション講座で、ベルニーニについて講義を受けているので親しみがわく。この大聖堂には他にもベルニーニの作品が置かれている。そして、最後はサン・ピエトロ広場に出る。礼拝堂から両手を伸ばし、広場にいる人を包み込むようなつくりになっている。広場の横、クーポラの切符売り場は長蛇の列であった。午前中は並んでなかったのに、午後になって見学に来る人が多くなっているのである。その点、案内書とは異なるようだ。エレベーターがあるにはあるが少ない。そのため、車椅子のスミさんはその都度階段を歩かなければならなかった。羊子と共に車椅子を階段で上げたり、下げたりするのも骨折りであるが、スミさんもがんばって階段を上り下りし、見学できたことは良かったと思う。
 午後3時頃にヴァチカンを後にして食事を取る。その後、小さなスーパーマーケットがあり、二日分の朝食を仕入れる。食事のたびにカフェテラスで食べるのも面倒なので、朝食はホテルで簡単に済ませることにしたのである。パンと牛乳、チーズとハム、そしてミニトマト程度である。ホテルに戻り、ベッドに横になる。万歩計は1万を超えていた。
 今夜は8時にカルロスさんから夕食を招かれている。羊子は手伝いに6時頃に出て行き、8時前に迎えに来る。カルロスさんの家はホテルからわずかな距離である。例の歩きにくい石畳の道を、スミさんも杖をつきながら歩く。カルロスさんの家には数人の人が来ていた。結局15人が集まる。まずバリトンのカルロスさんがイタリア歌曲やオペラを歌い、羊子がスペインの作品のファリアの曲をピアノ演奏する。続いてスミさんが羊子の伴奏で「ふるさと」を歌い、私もハーモニカで一緒に演奏をする。お恥ずかしいことであるが。その後、カルロスさんが準備してくれた食事、特大のトルティーリャ(日本で言えばスペインオムレツ)と野菜サラダ、デザートをいただく。食事後に、カルロスさんがスミさんの誕生日と言うことでケーキの上にローソクを立てて持って入ってくる。9月19日、今日はスミさんの誕生日である。予期せぬことでスミさんも驚くのであるが、皆さんの祝福をいただきながらローソクの火を消す。その後、カルロスさんが「ママ」の歌をすばらしいバリトンで歌い、一同も唱和してお祝いしてくれたのであった。「ママ」は「マーマミーア」で歌われているので、私たちもよく知る歌である。バルセロナに来て演奏家たちの誕生会を受け、今度はローマで誕生会が開かれ、スミさんは感激の連続である。誕生日のお祝いにカルロスさんのCDをサイン入りでいただく。後日、日本に帰り、懐かしく感激して聞くだろう。こうしてローマ滞在二日目が終わる。



バリトン歌手のカルロスさんが歌い、羊子がピアノで伴奏する。



記念撮影。スミさんが持っているのはカルロスさんのサイン入りCD、
誕生日プレゼントとしていただく。