鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

隠退牧師の徒然記 <73>

 

隠退牧師の徒然記(2011年6月1日〜)<73>
2012年3月19日 「知らない街を訪ねつつ」 


聖書の言葉
わたしたちはトロアスから船出してサモトラケ島に直行し、翌日ネアポリスの港に着き、そこから、マケドニア州第一区の都市で、ローマの植民都市であるフィリピに行った。そして、この町に数日間滞在した。安息日に町の門を出て、祈りの場所があると思われる川岸に行った。そして、わたしたちもそこに座って、集まっていた婦人たちに話をした。
使徒言行録16章11-13節)



「世界史本が思わぬヒット」と題して、3月17日の読売新聞夕刊が報じていた。私も最近は、もっぱら世界史に関する物語等を読んでいるので、この記事を興味深く読む。世界の出来事を通史的にまとめた文庫本が全国の書店で異例の売れ行きを見せているとか。カナダの歴史家、W・H・マクニールの「世界史」(中公文庫)上下巻の売り上げが30万部であるという。購入の中心層は中高年で、今になって世界史の本を手にするのは、流行の「学び直し」に目覚めたのか、と報じている。それとも日々変わる世界の政治情勢に対する関心か、とも報じている。世界史はカタカナが多く、扱う時代が長すぎるということで、大学受験の選択科目でも敬遠されているという。「時代の転換期には歴史ブームが起きる。現在の世界的な不安定が人々の目を歴史に向けさせている」と指摘するのは東京女子大の油井大三郎教授であるという。
 私が世界史、特にヨーロッパ史に関心を寄せ始めたのは、昨年4月5月にスペイン・バルセロナでピアノの演奏活動をしている娘の羊子のもとで連れ合いのスミさん、次女星子と共に過ごしたとき、滞在中に読んだ塩野七生著「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」、同「ルネサンスの女たち」を読んでからである。ヨーロッパ世界の歴史の一部を知ることになり、これはヨーロッパ全体の歴史を読みたい気持ちになる。もちろん今までも世界史は読んでいるが、今回は興味津々の姿勢をもつことになる。帰国してから早速、山川出版社の「もういちど読む世界史」、自由国民社の「世界史のおさらい」等を読む。続いて塩野七生さんの「ローマ人の物語」文庫本43巻を一気に読んだのである。そして、新潮選書の森本哲郎著「文明の旅(歴史の光と影)」も興味深く読んだのであった。塩野さんの著作には地中海世界を中心とした物語が多く、大体は読むことになった。
 このような世相を反映してか、テレビではBSで世界の街並を紹介する番組が多くなっている。ほとんど毎日、どこかのチャンネルが放映しているので、連れ合いのスミさんと共に毎日見ているのである。新聞の番組欄で探すのは、ヨーロッパ世界の街並を紹介している番組なのである。夜の7時8時台のテレビ番組は、ドタバタする内容が多い。参考になり、面白く構成されているようであるが、見たいとは思わない。ヨーロッパの街並、生活様式、食文化等、見ていて楽しくなるし、歴史を知ることにもなる。今は静かにたたずんでいる街並であるが、ほんの500年も前は中世の時代で、戦いの世界であったのである。戦争は50年60年前まで世界で展開していたのであるから、今の静かな街並はできあがったばかりということになる。そして、戦争は今でも起きている現状であり、平和な世界と思うわけにはいかないのである。




朝の散歩で「聖誕の門」側からサグラダ・ファミリアを眺める。


サグラダ・ファミリアの見学は長蛇の列である。待つだけでも数時間を要する。




 観光が街並を支えることは、どこの国でも言われていることである。ヨーロッパ諸国は観光に力を入れているのであるが、やはり観光の目玉を持つ国には適わない。フランスはルーブル美術館をはじめとする他の美術館やセーヌ河等、目玉の観光地が多い。スペインでもイタリアでもローマ時代からの遺跡が目玉となっており、やはり訪れる人が多いのである。バルセロナでは歴史の観光ではなく、現代の取り組みであるサグラダ・ファミリアが目玉となっている。45日間、サグラダ・ファミリアを目の前にしながら過ごしたのであるが、毎日、サグラダ・ファミリアは長蛇の列であった。日本でも東北の人々が観光する人々の誘致運動に立ちあがっている。何も復興に協力できないと言わないで、東北旅行をして、宿泊をして、現地の美味しい物を食べて、お土産をいっぱい買ってくるのも、復興協力なのである。ヨーロッパの街並ばかりではなく、ここは日本の、中でも東北の美しさを見に訪れることも考えてみよう。