鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

隠退牧師の徒然記 <65>

 

隠退牧師の徒然記(2011年6月1日〜)<65>
2012年2月29日 「良い知らせを伝える者」 


聖書の言葉
いかに美しいことか、山々を行き巡り、良い知らせを伝える者の足は。彼は平和を告げ、恵みの良い知らせを伝え、救いを告げ、あなたの神は王となられた、とシオンに向かって呼ばわる。その声に、あなたの見張りは声をあげ、皆共に、喜び歌う。彼らは目の当たりに見る、主がシオンに帰られるのを。
イザヤ書52章7-8節)



日本聖書神学校の卒業式が2月27日に行われたので、連れ合いのスミさんと共に出席した。彼女は腰の具合がよろしくないので、リハビリ以外は外出を控えているのであるが、卒業式には何が何でも出席すると主張する。いつもなら金沢八景駅までタクシーを利用するのであるが、六浦駅まで30分を要して歩いたのである。そして目白駅から神学校までの道も20分歩く。かなり歩くことになったのであるが、元気に馳せ参じるという気概が伝わってくる。
 ぜひ出席したいのは、小林美恵子さんが卒業するからである。小林さんは、私達が大塚平安教会在任の頃、教会員としてお交わりを深めていた。教会学校教師、教会役員、礼拝の奏楽、講壇のお花、聖歌隊、幼稚園評議員等、諸分野にわたり奉仕されていた。向学心に燃え、大学を通信教育で卒業する。そんな彼女に、神学校への道をお勧めしたのである。彼女の賜物は伝道者であると示されたからである。しかし、伝道者は神様の召命が何よりも大切なのである。小林さんは祈りつつ過ごされ、神様の招きと信じたのであった。日本聖書神学校は夜の授業である。しかも目白まで通うのも大変なことでもある。小林美恵子さんのお連れ合いもご理解され、彼女の伝道者への道を励まされたのであった。4月からは神奈川教区内の上倉田教会の担任教師として赴任する。いよいよ伝道者への道を歩む。良い知らせを告げる小林美恵子さんの上に主の豊かな祝福があるよう祈ったのである。




日本聖書神学校の卒業式で、卒業証書を授与される小林美恵子さん。



 今回の卒業生は8名であるが、それぞれ関係する皆さんが出席され、祝会場は立錐の余地もないほどであった。カンバーランド長老教会は独自の神学校がないので、献身者はこの日本聖書神学校で学ぶことになっている。同教会の卒業生のために30名もの皆さんがお祝いに馳せ参じていた。小林美恵子さんは最初の二年間は大塚平安教会を奉仕教会としていたが、その後は田園江田教会に教会員籍を移して奉仕することになる。そのため、大塚平安教会の菊池丈博牧師と教会員数名、田園江田教会の宗野鏡子牧師と教会員数名、そして赴任先の上倉田教会の加山久夫牧師もお祝いに出席されたのであった。卒業生には宮澤恵樹さんもおられる。彼は4月から横須賀上町教会主任教師として赴任する。彼の父上は軽井沢南教会の宮澤豊牧師である。数年前に軽井沢南教会に招かれて礼拝を担当した。その父上ともお会いし、親しく懇談することができた。また、宮澤恵樹さんは大宮教会の出身であり、疋田國磨呂牧師夫妻とも親しくお話することができた。疋田牧師が関東教区議長時代に私は教団問安使と教区総会に出席し、あるいは教団常議員会等でも親しくさせていただいているのである。祝会では、卒業生の皆さんのお祝いもあるが、いろいろな繋がりがある皆さんとの歓談が導かれたのでもある。
 日本基督教団を代表して総会書記の雲然俊美牧師の祝辞があったが、私も教団書記在任中に二度ほど祝辞を述べている。日本基督教団としても伝道者が減少しており、卒業して日本基督教団の教会に赴任する伝道者を歓迎したいのである。神学校の久山庫平理事長が祝辞の中で、卒業生ばかりにではなく、会場にいる出席者にもお願いとして言われたことは、教会は神学生を産み出して欲しいということであった。聞くところによると、4月からの新入生が少ないということであった。しかし、教会が神学生を送ると言っても、やはり本人の召命が必要なのであり、その意味でも伝道を叫ばなければならないのである。今、日本基督教団は「伝道」を叫び始めている。変な言い方であるが、もちろん教会は伝道を推進している。しかし、日本基督教団の歴史の中で、「伝道」の文字が消えかかっていたことは事実である。大切なことは社会の中で倒れている人々の救済である、との観点は社会活動方針を掲げながらの取組みとなっていた。もちろん伝道における社会活動である。主イエス・キリストの十字架の救いは万人のためであり、特定な状況に置かれている人々ばかりではない。すべての人々の救いが宣教の課題なのである。そういう伝道の叫びが薄らいでいたことは確かである。今こそ、教会は「伝道」を叫ぶことである。それによって伝道者へと召されていく人々が出てくるのである。
 かく言う私は、早々と隠退してしまった観があるが、体の限界を感じていることは確かである。それでも用いられるならばお応えしたいと思っている。横須賀上町教会は、この一年半は代務者を置いての歩みであった。そのため私は第一日曜日の礼拝を担当していた。4月から宮澤恵樹伝道師が牧者として就任するので、もはやその任が終わりかと思ったが、引き続き応援することになった。日本基督教団の定めは伝道師である補教師は洗礼式、聖餐式の執行は出来ないことになっている。伝道師になって二年後に正教師の試験を受けるのである。そこで初めて教会の牧師と称されるようになるのである。従って、宮澤伝道師が正教師になるまで、聖餐式のある礼拝を担当することになった。
 「良い知らせを伝える者の足」は毎日散歩により鍛えている。もう少し「良い知らせを伝える足」として働く必要があると示されている。