鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

隠退牧師の徒然記 <51>

 

隠退牧師の徒然記(2011年6月1日〜)<51>
2012年1月27日 「近寄って行く」


 

聖書の言葉
ある人がエルサレムからエリコへ下って行く途中、追いはぎに襲われた。追いはぎはその人の服をはぎ取り、殴りつけ、半殺しにしたまま立ち去った。ある祭司がたまたまその道を下って来たが、その人を見ると、道の向こう側を通って行った。同じように、レビ人もその場所にやって来たが、その人を見ると、道の向こう側を通って行った。ところが、旅をしていたあるサマリア人は、そばに来ると、その人を見て憐れに思い、近寄って傷に油とぶどう酒を注ぎ、包帯をして、自分のろばに乗せ、宿屋に行って介抱した。そして、翌日になると、デナリオン銀貨二枚を取り出し、宿屋の主人に言った。「この人を介抱してください。費用がもっとかかったら、帰りがけに払います」。
ルカによる福音書10章30-35節)



 インターネットによるメールは、今では普通の伝達手段になっており、その速さには驚くばかりである。世界のどこにでも発信できるので、情報はあっという間に伝わるのである。スペインにいる娘の羊子とはいつもメールでやり取りしているし、最近はスカイプで相手の顔を見ながら話すこともできる。昔はそれなりに伝達手段を持っていたが、数日は要するし、何ヶ月もかかる場合もある。ヨーロッパ史などを読むと、やはり伝達が盛んに行われているが、相手に届くまで何日も要するので、もう次の事態が発生し、送った伝達は不要になることもしばしばである。日本でも飛脚制度が発達して行くが、やはり時間の障害はどうにもならなかったのである。電話が発達し、伝達手段は速やかに行われるようになる。そしてメールの発達である。メールは相手の状況を考える必要もなく、送っておけばよいのである。電話の場合は、まさか夜中に掛けるわけにはいかない。そういう中で、早さはありがたいが、やはり手紙にしたためて、少しは時間を要するが、意を尽くして手紙を書くに重きを置いている。
 それにしても、最近は封書のお便りが少ない。その封書のお便りは、最近は郵便切手は記念切手ばかりであり、その記念切手も楽しみなのである。どんな記念切手なのかと、中身より先に切手を見るのであった。その記念切手は古切手として使える。古切手を集めている団体があり、その古切手を蒐集家に売ることで、薬代になるというのである。その取組みをしている団体の一つにキリスト教海外医療協会である。その協会から総主事通信が送られてきた。毎月、発行の度にメールにより送られる。その総主事の大江浩さんとは知人でもあるからだ。横浜本牧教会の代務者として2010年4月から9月までの半年間担ったのであるが、大江さんは教会員であり、役員としても奉仕されていた。代務者を退任しているが、その後も総主事通信を送ってくださるのである。
 わたしの認識の甘さは、キリスト教海外医療協会の働きは古切手を集め、薬代にし、それで海外の医療活動をしている、大江浩さんとお会いするまではそれくらいの理解であった。確かに古切手による海外医療活動で活躍しているのであるが、もっと大きな意味で、幅広く活動していることを知るのである。今回送られた「総主事通信2011年⑨」にも各国のワーカーの働きを紹介している。引用させていただくと、バングラデシュでお働きである。
ワーカーの働き(月例報告から)
● 乾 眞理子さん (リハビリテーション医師 バングラデシュ/カイラクリ・クリニック/短期ワーカー)。乾さんは、年間約8 か月(短期ワーカーとしては6 か月)、カイラクリ・クリニックで活動しています。「・・・今月は『骨折』入院が多かった。子どもは木から転落や地面での転倒、大人は仕事中の事故での受傷が多い。・・・レントゲン撮影は他院に連れて行くので1 日がかり。(クリニックでの治療が)無理だと判断すると他院に搬送、処置後にカイラクリ・クリニックに戻ってくる。ただ他院では整復後のレントゲン撮影はしないので、戻ってくると、レントゲン撮影のためにまた1日がかりで他院に連れて行く」(月例報告より)
途上国の医療過疎地にある、小さな村の、村人による小さなクリニックの日常風景です。
「・・・初めてカイラクリでクリスマスを体験した。・・・教会の礼拝に参加。賑やかなキャロリングを楽しんだり、スタッフに自宅に招かれて(少数民族の)マンディの人たちのコミュニティの様子を知ることができた。しかし私にとっては、患者さんたちの傍らにいられることが(何もしてあげられなくて心痛むが・・・)、最もクリスマスらしい過ごし方だったと思う。」(同上)草の根の人々の「傍らにいること」を喜びとするワーカーの想いが伝わります。

 このような働きが各国で行われており、それらの情報を総主事通信で報告している大江浩さんのお働きには、まことに敬服する限りである。総主事通信により、海外における医療活動を示されるのである。今では愛読者として総主事通信を読んでいる。
大塚平安教会在任時代、古切手集めは教会の業として取り組んできた。今までもいろいろな方が係りとして奉仕してくださっている。古切手は、やはり整理しないと送ることができない。封筒から切り取る時、切手すれすれに切り取ったり、無造作に切り取ったりしているものがある。切り取りの規格があるので、改めて一枚一枚をチェックしているのである。それらの大変なご奉仕が海外の医療活動の原点になっているのであり、奉仕者には感謝すると共に今後も続けていただきたいと願うのである。そのお仕事もイエス様の示されている「善いサマリア人」の愛の業なのである。