鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

隠退牧師の徒然記 <28>

 

隠退牧師の徒然記(2011年6月1日〜)<28>
2011年12月2日 「平和への道 (1)」 


聖書の言葉
そのころ、皇帝アウグストゥスから全領土の住民に、登録せよとの勅令が出た。ヨセフもダビデの家に属し、その血筋であったので、ガリラヤの町ナザレから、ユダヤベツレヘムというダビデの町へ上って行った。身ごもっていた、いいなずけのマリアと一緒に登録するためである。ところが、彼らがベツレヘムにいるうちに、マリアは月が満ちて、初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。
ルカによる福音書2章1-7節)



 塩野七生さんが書いた「ローマ人の物語」を読み終えた。単行本としては15巻であるが、私は43巻の文庫版で読み終えたのである。読み始めたのは今年の6月のはじめ頃である。11月23日に読破した。「ローマ人の物語」を読むきっかけになったのは、4月と5月にスペイン・バルセロナの娘の羊子のもとで滞在していた時である。滞在中、一緒に住んでいた路美さんから「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」、「ルネッサンスの女たち」(いずれも塩野七生著)を借りて読んだのである。失礼ながら西洋講談を読むようで、面白いというより、歴史を知るのに役立ったのであった。ここは西洋史をもっと学ぶ必要があると思った。塩野七生さんが「ローマ人の物語」を単行本で出版していることは知っていた。しかし、いささか値が張るので敬遠していたようである。スペインから帰って、外出のついでに本屋に立ちよった時、「ローマ人の物語」が新潮文庫本で出版されていることを知る。早速、求めて読み始めたのである。このブログで「ローマ人の物語」をまとめるつもりはないし、できないのであるが、特に興味があることについて記しておこう。





塩野七生著「ローマ人の物語」(新潮文庫全43巻)



 ローマの建国記念日は紀元前753年4月21日とされる。最初の王ロムルスによって始められたのである。紀元476年に西ローマ帝国が滅亡し、紀元1453年に東ローマ帝国が滅亡したとされている。しかし、著者はローマ帝国が滅亡したのは紀元476年の西ローマ帝国の滅亡の時だとしている。確かに東ローマ帝国は存続していたが、東ローマ帝国はローマにあるのではない。事実上、ローマにある西ローマ帝国が滅亡したことはローマ帝国の終焉となるのである。1千年に及ぶローマの歴史において、世界の文化を築いたのは、実にローマであることを示される。道路敷設、法律の作成、税制の取組み、インフラ事業、キリスト教の拡大等、ローマの歴史は現代文化の基礎を据えたということである。また、軍事組織も徹底しており、この軍事力がヨーロッパ、アフリカ、オリエントの世界を支配するようになる。覇権を広げて行く基となるのは「ローマの平和」のためであった。ローマが平和であるためには支配する国々を、同じように平和に導くためである。そのため占領した国々はローマと同和して行くのであり、過酷な取り扱いはしないし、ローマの元老院議員にもなれる道を作っている。さらに、その国々の独自性は尊重して行くのである。
 ローマは当初は王制であったが、共和制になっていく。そのため、元老院議員が選ばれ、今でいえば国会であるが、元老院で決められたことが実施されていたのである。しかし、600人にもなる元老院議員での協議は時間を要する。諸外国に対抗するには迅速に対応しなければならない。そのことに気づくユリウス・カエサルは帝政国家の基礎作りをするのである。カエサルはローマの執政官である。最高責任者であるが、元老院の決定がなければ、最高責任者でも自由に動けないのであった。カエサルの帝政への移行は成功して行くのである。そして初代皇帝になったのはアウグストゥスである。本来、カエサルをもって皇帝とすべきであるが、制度上ではアウグストゥスをもって帝政ローマ国家が始まるということである。ローマの皇帝たちは、ローマの平和のために覇権を広げて行くのであるが、真の平和は、人間の力では実現できない。ローマ帝国の終焉がそのことを示したているのである。この初代皇帝アウグストゥスの時代に主イエス・キリストが出現するのである。この「ローマ人の物語」を読むとき、人間の力で平和を築いて行くことと、主イエス・キリストが神様の御心において平和を実現して行くことが平行していると思わせられた。「キリストの勝利」であると著者も記している。




狭い書斎なので蔵書が書棚に収めきれない。



机の下にも書棚を置いて収納しているのであるが。
まだダンボールに入ったままの本もあり、出してあげたいのであるが。



半年間、「ローマ人の物語」は楽しませてくれた。