鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

スペイン滞在記 <33>

 

スペイン滞在記(2011年4月4日〜5月18日) <33>
2011年4月26日「高級リゾートマンション」


 今日は午後7時から、羊子が高級老人ホームでピアノの演奏をするので、我ら家族も一緒に行った。老人ホームとは言わないそうで、どちらかといえば高齢者の住む高級リゾートマンションなのである。羊子の家からサグラダ・ファミリア駅で電車に乗る。二つ目の駅で乗り換える。乗ること約30分である。降りた場所はサン・クガット地域になる。この辺は高級住宅地で、一戸建ての家が並ぶ。日本人の日本語学校もあるという。いわゆる山の手地域なのである。駅に降り立つとドミンゴさんが車で迎えに来ていた。スミさんは数年前に来た時にお会いしているが、私と星子は初めての挨拶を行う。車に乗ること10分で「ラスルーナス」との名称の高級リゾートマンションに到着した。ドミンゴさんは夫婦でここの住民であり、羊子のピアノ演奏会主催者の一人なのである。地下駐車場に入り、エレベーターで1階に上がった。玄関付近で、丁度外出から帰ってきた女性の館長さんに出会い、挨拶した。この館長さんも主催者の一人であるという。
 開会は午後7時からであり、演奏会場の隣が図書室になっているので、私たちはそこでしばらく休むことにした。書籍が並んでいる。テーブルの上にはいろいろな新聞、雑誌が置いてある。実際、私たちが休んでいると、二人の婦人が新聞を読みに来ていた。ソファーに深々と座っていると、ここの住民の皆さんの生活というものを示される思いである。まだ1時間前である。演奏会場は広いホールで、そこで何かとイベントが行われるようである。大きな庭をコの字形に囲むようにしてマンションが建てられている。一角にはプールがあり、芝生の庭に散歩道があり、外に出かけなくても、庭を歩くだけでも運動になるのである。テラスも広く、長くあり、所々にテーブルが置かれ、椅子があるので、テラスの語らいも楽しそうである。芝生の庭園の中に3羽の鶴の置物があった。飛ばない鶴なんですよ、とドミンゴさん。マンションの中にはシアタールームもある。医療ケア付でそれなりのスタッフが常駐しているということである。住人は現在90人位とのことである。日本的に言えばケア付高級老人ホームということになる。ドミンゴさんも81歳ということである。私たちが休んでいると、住人の会長さんと出会う。やはり演奏会の主催者の一人である。この人も82歳とか。彼はビデオを撮影してくれる。演奏中、一番前のソファーに座り、腕前を駆使して撮影していた。
 


広い庭は憩いの場である


いよいよ開会である。会場はソファーでリラックスしながら聴くことができる。私たちは前列から二番目のソファーに座ったので、どのくらいの人が聴きに来ているのか分からない。ドミンゴさんが言うには、今はバカンスなので旅行者が多いということである。後で確認したが30人くらいの人がいたと思う。ドミンゴさんの開会の挨拶があり演奏が始まった。そのときドミンゴさんは羊子を我々の「家族」だと紹介していた。カトリック教会に出席した時も、神父さんが羊子を我々の「家族」といい、家族の家族が日本からやってきたと紹介してくれたのである。家族として外国人を温かく迎え入れることはスペインの国民性なのかも知れない。羊子の演奏は第一部としてベートーベンのもの三曲、ショパンのもの一曲を弾いた。第二部はスペインもので、アルベニスのものを二曲、グラダナスのもの一曲、ファリアのもの一曲である。終わりにドミンゴさんが作曲したものを弾いた。ドミンゴさんは作曲等音楽に生きがいを見つけている。その後、アンコールで一曲弾く。終わりに館長さんから羊子に花束が贈られたが、私たち三人も花が贈られた。羊子が私たち家族を紹介し、日本の「さくら」を三人で歌わせられた。歌詞をよく覚えていないが、ピアノに合わせて何とか歌ったようである。
 その後、食堂で夕食をいただく。食堂なんてものではない。大きな高級レストランである。住人がそれぞれ都合の良い時間に来て食事をするようである。カバで乾杯し、まずアスパラガスのスープをいただく。続いて牛肉の煮込みとご飯である。このご飯は芯があり、硬くて残してしまった。デザートは大きなアップルケーキとコーヒーである。
 帰りは館長さんが羊子の家まで車で送ってくれた。良い経験をしたと思う。