鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

スペイン滞在記 <28>

 

スペイン滞在記(2011年4月4日〜5月18日) <28>
2011年4月23日「サン・ジョルディの日
 

今日は土曜日ある。十字架にかけられたキリストが、金曜日の夕刻には埋葬された。土曜日は静かに救いの事実を信じ、日曜日の復活を待望する日である。少なくとも日本のプロテスタント教会は、そのような意義として過ごしている。ところが、こちらではサン・ジョルディのお祭りなのである。聖金曜日はもはや過去のことであり、新たなるお祭りを喜ぶ、どこの国民性も同じであるが、この国の人たちもお祭り好きであることは確かである。この日はカタルーニャ地方に古くから伝わる「本と花の祭り」としてお祝いされている。従って、スペイン全体のお祭りではなく、バルセロナが含まれるカタルーニャ地方のお祭りと言うことである。しかし、本が安く買えるというわけで、カタルーニャ地方以外の人々も、遠くからこのお祭りに出かけてくるのである。そしてまた、諸外国の観光客もこのお祭りの珍しさに見学に来ているというわけで、こんなに多くの人々の賑わいになるのである。この日、男性は愛する女性に赤いバラと麦の穂を贈り、女性は男性に本を贈るのであるという。羊子が後学のために見学することを勧める。同居しているRMさんが案内してくれることになり、星子と3人でグラシア通りに出かける。


本屋さん



花屋さん


地下鉄のサグラダ・ファミリア駅から三つ目のバセジ・ダ・グラシア駅で降りる。地上に上がるとサン・ジョルディの賑わいを見る。本屋さんとバラの花を売る店が歩道に軒並み続いている。むしろ、それらの店が見えないほど、人の群れである。歩くのもままならぬほどで、どの本屋にも人々が立ち止まっているので、前に進めないのである。歩く人は、既にバラの花を買って持っている人もあり、今度は本をあさっているのである。本は2割ほど安いとか。少し空いたあたりで、造花のバラをブローチにして売っている店があり、そこで我が家の女性達、RMさんを含めて4個買い求めた。生花はいずれ枯れてしまうので、記念に持って帰りたいのである。一個3ユーロであるから約500円である。私への本であるが、これもミニ本を売っていたので、「EL PRINCIPITO」(星の王子様)にした。4×6×2cm位のミニである。それでも内容はすべて収められているそうだ。スペイン語であるが、読まないにしても飾り物となるだろう。村上春樹著「IQ84」もスペイン語版で売られていた。世界の村上春樹なんだと、少しばかり驚かされた次第である。
 この「サン・ジョルディの日」のいわれは、カタルーニャ守護聖人サン・ジョルディにまつわる伝説に由来している。その昔、カタルーニャ地方の村に1匹の龍が住んでいた。この龍の息には毒があり、遠くからでも人を殺すことができたという。恐怖におののいた村人たちは、くじ引で毎日1人ずついけにえを差し出すことを決めた。ある日、王家の姫がくじに当たってしまった。王は姫の命を救ってくれるよう頼んだが、村人たちは王の願いを聞き入れず、姫を龍のもとに送った。するとそのとき、白い馬にまたがり、黄金に光輝く剣をふりかざした若き騎士が現れた。この騎士こそが、サン・ジョルディである。彼は驚く姫に「姫を救い、悪龍を退治して、平和な村にするために来ました」と告げ、龍を剣で一突きにした。そのとき流れ出した血から、一輪の赤いバラの花が生まれたという。本を贈る習慣も、かつてはカタルーニャ語の本を贈り、ひそかにカタルーニャへの愛を確かめる特別な意味があったということである。



モンセラットの教会にあるサン・ジョルディの像



ガウディの作品カサ(家)


 この伝説に基づいて、今日のように「サン・ジョルディの日」として盛んになっていると言うことである。それはそれは歩くこともできないほどの多くの人で賑わっているのである。いつまでもこの通りを歩いていたら、少しも進まないので、別の通りを歩くことにした。そこがグラシア通りである。日本で言えば銀座の通りで、超一流の通りであるとか。しかし、ここも歩道には本屋とバラ屋さんにあふれているが、先程の通りほどではない。この通りにはガウディの造った建物が二つある。カサ・ミラとカサ・パトリョである。ここはマンションになっているが、ガウディの作品として一般公開されている。有料で公開しているので、チケット売り場は長い行列ができていた。一般公開の出入り口とマンションの出入り口は区別されていると思うが、住人は落ち着かないのではないかと、老婆心ながら思うのである。