鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

ある礼拝( 耳ある者は聞きなさいと )

 
 昨年4月から9月まで横浜本牧教会の代務者を務め、合わせて附属早苗幼稚園の園長を務めました。それと共に横浜本牧教会と関係する聖坂養護学校、オリブ工房等の職員の皆さん向けに聖書を学ぶ時を担当しました。それぞれ4回の集会で皆さんと共に聖書の勉強会を行いました。少し残念であったことは、職員の皆さんと聖書の勉強会をすると共に、利用者の皆さんとの触れ合いを持ちたかったということです。それが、9月に退任し、10月からは関わりが無くなったのですが、今になってその機会が与えられることになりました。一週間前にオリブ工房の職員の方からお電話をいただきました。講演をお願いしたいということでした。職員の皆さんに対する講演でしたらお断りするつもりでいました。4回は少ないかもしれませんが、密度の濃い聖書の勉強会をしているからです。ところが職員の皆さんではなく、利用者の皆さんに対するお話であると伺い、二つ返事でお受けいたしました。残念であった思いが、ここでかなえられるとは、神様のお導きを感謝したのであります。聖坂養護学校においても、職員の皆さんと聖書の学びをするだけで、学生の皆さんとの触れ合いはありませんでした。しかし、一人の学生さんが召天され、横浜本牧教会で葬儀が行われ、司式をさせていただきました。その葬儀には学生の皆さんが列席されましたので、学生の皆さんに向けて葬儀説教をしたのでした。
 一週間前にお電話をいただき、講演を承諾しましたら打ち合わせに伺いたいと言われるのです。わざわざお出でいただかなくても電話でよろしいですよと述べました。どうしても伺って、改めてご依頼申し上げますとのことで、本日お二人の方がお見えになりました。正式には社会福祉法人聖坂学園オリブ工房です。毎年、オリブ祭講演会を開催しているということです。メインテーマは「冬の一番寒い日に心温まる話を」と言うことで、講師から「共に生きる」「心」等のテーマでお話を聞くということでした。対象は知的障害を持つ成人の皆さん、約65名です。そして保護者、職員・支援員等合計120名くらいとのことでした。うれしくなりました。久しぶりで知的障害の皆さんとのふれあいが与えられました。2月10日に開催とのことです。
 昨年9月をもって社会福祉法人綾瀬ホームおよびさがみ野ホームの嘱託牧師を退任しました。31年間、利用者・職員の皆さんと、週一回礼拝をささげながら歩んでまいりました。それと共に嘱託牧師ですから、葬儀があれば司式を担当します。両ホーム合わせて31年間で50名の皆さんの召天記念礼拝を担当して来ました。加えて埋葬式、偲ぶ記念礼拝も行ってきたのです。利用者の皆さんとの礼拝を担当するようになって、私自身随分と訓練されたと思います。大塚平安教会に31年前に就任しましたが、それまでの青山教会、陸前古川教会、登米教会の牧会におきましては、知的障害者と出会うことはありませんでした。従って、初めて両ホームの礼拝に臨んだ時、どのような言葉で、どのようにお話するか、迷うばかりでした。施設長は幼稚園児にお話するつもりでよろしいですと言われました。その頃、私は40歳であり、人生経験も薄く、決して能弁ではありませんでした。聖書のイエス様のお話を一生懸命にするのですが、目の前で大きなあくびをされるのです。そのうち、隣同士でけらけらと笑いながら話しているのです。これではだめだと思いました。利用者の身になってお話しなければならないと思うようになったのです。もちろん聖書のお話ですが、利用者にとってのお話が必要なのです。
そのことに気が付きました。わざと面白いお話をするのではなく、利用者を中心にお話すれば、笑ってしまうことになるのです。31年間、毎回異なるお話ではありません。同じお話を繰り返しているのです。利用者の皆さんもお話を覚えており、ここは笑うべきだということも心得るようになっていたのです。礼拝をささげる生活は力であり、希望であることを知的障害者の皆さんから教えられているのです。今日は礼拝論になってしまいました。
<聖書の言葉>
耳ある者は、「霊」が諸教会に告げることを聞くがよい。勝利を得る者には、神の楽園にある命の木の実を食べさせよう。
ヨハネの黙示録2章7節)