鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

励ましのぼんぼん時計 ( 御救いのよい知らせを )

 
 二階の書斎で過ごしていると、階下からメロディーが流れてきます。時を知らせるカラクリ時計です。それから5分ほどしてから、別のメロディーが流れてきます。別のカラクリ時計です。こちらの時計は電波時計であり、正確な時間です。これらのカラクリ時計は、三人の子供たちが私達夫婦の結婚記念日や他の記念日に贈ってくれたものでした。私の誕生日が5月10日であり、その頃は「母の日」と重なる時があり、おそらく重なった日に贈ってくれたのかもしれません。また、一つの時計は結婚記念日に贈られたものです。これらの時計は癒し系のメロディーが流れ、時を知らせる毎にしみじみと耳を傾けるのでした。二つの時計は競うようにして私達夫婦を癒しているようです。
 最初に時を知らせる時計は玄関にかけています。その時計に並ぶようにして掛けられているのが、昔の柱時計、ぼんぼん時計です。掛けているだけで、今は時を刻んでいません。この時計は、遡って私の中学生頃にもあったと思います。ぜんまい式の振り子時計で、時刻通りに音で知らせます。1時であれば「ボーン」となり、12時であれば12回ボーン、ボーンと鳴らします。30分の時は1回鳴らします。従って、12時30分、1時、1時30分はいずれも1回鳴るので、今は何時なのか分からなくなることがあります。私の両親がなくなり、姉の美喜子が入退院を繰り返すようになった時、連れ合いのスミさんが介護でこの家に泊まりに来ていました。子供たちも留守番の為この家に泊まるようになりました。時計の音がうるさくて寝られないというのです。それ以来、時の知らせであるこの柱時計を止めてしまいました。その代わり音の出ない今式の電池時計を掛けるようになったのです。しかし、私は青年の頃まで、このぼんぼん時計で毎日生活していましたので、もはや時を知らせない時計を残念に思っていました。
 青春の日々、いろいろな出会い、体験を持ちながら過ごしたことは、私もその一人です。時には眠れないこともありました。布団に横たわったまま、考え事をしていると、ボーン、ボーンと12回鳴るのを聞くのです。さらに眠りが来ることもなく、寝返りを何度もうつたりしていると、ボーン、ボーン、ボーンと三回聞くことになります。3時かあ、と思いつつ音を聞いたのですが、やがて7回の音を聞くことになります。眠られない夜でありましたが、それでも眠りの恵みを与えられたようです。「ボーン」は励ましの音なのでしょう。
 いよいよ4月から再びこの家に住むようになるので、ぼんぼん時計を復活しようと思い、ぜんまいを巻き、振り子を振らせました。しばらく時を刻んでいましたが、やがて止まってしまいました。全体的に修理してもらうことにして時計屋さんに出しました。その後、しばらく動いていたようです。まだ、この家には引っ越していません。来る度にぜんまいを巻いては動かしていました。一日に一度はぜんまいを巻かなければならないのです。従って、ぜんまいを巻いて動かしても、その後何日も巻かなければ止まってしまいます。そして、住むようになり、ぼんぼん時計を始動させました。しばらく時を刻んでいましたが止まってしまいました。ぜんまいを巻いても動かなくなってしまったのです。私の中学生くらいの時からですから、60年間も時を知らせ働いてきたのです。再び修理して働かせるのではなく、もう休ませてあげようと思いました。ぼんぼん時計は玄関に掛けられ、私たちの生活を静かに見守っているようです。連れ合いのスミさんが外出するときは、必ずリスのシュータに声を掛けるように、私も外出するときには、無言のうちにぼんぼん時計に目をやります。ただ、それだけですが、玄関に入り、通れば自ずとぼんぼん時計に目を移しているのでした。自分と重なるような気がして。
12月1日、世の中はクリスマスの時の知らせを鳴らし続けています。遅ればせながら、イエス様の救いの時の知らせを鳴らしましょう。ボーン、ボーン、イエス様がお生まれですよと。
<聖書の言葉>
新しい歌を主に向かって歌え。全地よ、主に向かって歌え。主に向かって歌い、御名をたたえよ。日から日へ、御救いの良い知らせを告げよ。
詩編96編1節、2節)