鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

バルセロナ滞在記「聖誕の門を仰ぎ見つつ」<19>

バルセロナ滞在記(2014年10月21日〜)<19>
2014年11月9、10日「三回目の日曜日」



 11月9日は日曜日である。バルセロナに滞在するようになって三回目の日曜日を迎えたということである。日曜日は三回目でも、六浦谷間の集会バルセロナ礼拝は二回目である。10月21日にバルセロナに来て、迎えた日曜日は26日であった。前日の25日は羊子の結婚式であり、翌日はそれぞれの教会に挨拶の意味でミサに出席する。まず、サグラダ・ファミリアのミサが午前9時から始まる。ミサは羊子の結婚式を司式した神父さんが担当していたが、羊子がミサの奏楽を行うので、私達も出席したのであるが、私の出席を知った神父さんが、ミサの終わりに私も祝祷をするように求められたのである。それについては既に報告しているが、その後は12時からパロキアのミサである。羊子が14年前より出席し、ミサの奏楽をしている。そのカトリック教会にも挨拶の意味で出席する。そのため日本語礼拝はお休みにしたのである。そして二回目の日曜日は11月2日であるが、サグラダ・ファミリアとパロキアのミサの間に六浦谷間の集会バルセロナ礼拝をささげる。羊子はそれぞれのミサで奉仕をしたが私は出席しなかった。今回、11月9日も日本語礼拝をささげる。スミさんはパロキアのミサに出席したが、私は出席しなかった。出席しても、何が行われているか、だいたいわかるのであるが、言葉が通じないので、結局出席してもわからないからである。
 ところで11月9日は大事な日であることは私達も知っている。毎日のことであるが、夜10時になるとあちらこちらからカンカン、コンコン、キンキンと鳴り物がしてくる。鍋やフライパンを叩いているのである。それぞれのマンションのベランダでたたいているので、街中の騒音となる。しかし、それもそんなに長く続いているのではない。これは11月9日の投票には独立賛成の票を入れるアピールなのである。バルセロナカタルーニャ州の中にあるが、そのカタルーニャ州はスペインから独立したいのである。独立を投票によって決めたいのである。当初はこの日に投票をして独立を宣言する予定であった。しかし、スペイン政府の反対もあり、その投票は延期されたのである。しかし、独立を叫ぶ人々は治まらない。それで独立をするための投票をするかしないかの投票をすることになり、それが11月9日に行われたのであった。
 10日の朝、テレビで投票の結果を報道している。羊子がそれを報告してくれたが、私自身もインターネットで投票結果を知ることになる。主催者側は投票の勝利としている。投票者の8割が独立賛成であったと言う。カタルーニャ州有権者は540万人であるが、そのうち225万人が投票する。開票率88%で独立賛成が80%であると言われる。独立反対は4.5%であったとも。投票の主催者側はこの数字で勝利宣言をしているのである。スペイン政府は、投票は違法であり、投票の結果は意味がないとしていると言われる。私は部外者だからコメントする必要はないが、この数字で勝利宣言をするのはいかがなものであろうかと思う。有権者に対して投票した人は半分にも満たない。それで80%の独立賛成であるのだから、有権者に対しては絶対数とは言えないのである。少なくとも半分以上の人が投票し、それで80%なら意味があるのではないかと思う。
 たまたま羊子の家にあった大泉陽一著「未知の国スペイン」(バスクカタルーニャガリシアの歴史と文化)を参考にすることができた。カタルーニャの歴史を見るとき、困難な歩みをしていることを知る。カタルーニャが1932年に自治法を成立させ、その頃のスペイン共和国でカタルーニャ自治政府を認めさせる。そして1934年にカタルーニャ政府はスペインからの独立を宣言したのである。ところが、この独立が実現しないうちにスペインの内戦が始まるのである。フランコ将軍による国民党の台頭である。1939年にスペインの内戦はフランコ将軍の勝利で終わるのである。結局、カタルーニャは幻の独立になったのである。1975年にフランコの死によってカタルーニャに自由が戻る。そして、カタルーニャは地方分立主義の旗頭として最初に地方自治権を獲得したのである。国家の内なる国家としての、地方自治を認められたカタルーニャには、地方自治政府が樹立されたのである。しかし、カタルーニャの人々にとってスペインの中における自治ではなく、独立して国家を樹立したいのである。それが歴史における独立運動であり、今や鍋たたきでアピールしているのである。
 今日は特別なこともないままに一日を過ごす。しかし、羊子の彼シグナシさんと共に随分と長い時間、犬達の散歩をした。サン・パウ病院の近くまで歩いたのである。そこまでの間にも公園がいくつもあり、それぞれの公園によっては犬達を連れて歩いたのであった。散歩以外は私はパソコンをしていることが多い。ブログを書いたり、滞在写真を整理したりしている。帰国したらすぐに滞在写真集を皆さんにお見せしたいのである。連れ合いのスミさんはと言えば、持参したiPadNHKの朝の連続ドラマ「マッサン」を見たり、映画を見たり、ニュース番組を見たりしている。もっとも最新のものではなく、少し古いものであるが、誰かさんが動画投稿をしているのである。インターネットでいろいろなニュースを見ているので、日本のことはよくわかっている。今日は東京とバルセロナとどちらが寒いか、そんな報道も見たりしている。それでもここはバルセロナであり、日本の生活とは違うことを示されながら一日を過ごしているのである。



毎日見ているサグラダ・ファミリア「受難の門」。



水道局の建物を見ながら。



サン・パウ病院の近くにある上の公園。
卓球台が置いてある。



この公園にもドックランや子供広場がある。