隠退牧師の徒然記＜２６０＞

隠退牧師の徒然記（2013年7月20日〜）＜２６０＞
2014年6月11日「何にたとえようか」

聖書の言葉
更に、イエスは言われた。「神の国を何にたとえようか。どのようなたとえで示そうか。それは、からし種のようなものである。土に蒔くときには、地上のどんな種よりも小さいが、蒔くと、成長してどんな野菜よりも大きくなり、葉の陰に空の鳥が巣を作れるほど大きな枝を張る。」
（マルコによる福音書4章30-32節）

綾瀬市から横浜市金沢区に移り住んで4年を経た。この4年は大塚平安教会を退任してからの年月にもなる。その大塚平安教会は、いよいよ新会堂建設となり、今までの建物が解体され始めている。30年間、教会の中にある牧師館で生活していたので、いろいろな思いを持ちながら解体を示されている。新しい教会が世の希望となるようお祈りしている。
転居してから4年を経て、ごみ処理もようやく慣れてきている。月曜日はプラゴミ、火曜日と土曜日は燃えるゴミ、水曜日はペットボトルや缶の日である。第二と第四月曜日は資源ごみの日になっている。これらの分別をいつも心に示されながら、ごみを回収してくれる場まで運ぶのである。よく間違える人がいて、回収所には張り紙されて置かれている。出す日が違いますよ、と言うわけである。やはりルールを守らないと、困ることになる。その点、スペイン・バルセロナにしても、マレーシア・クアラルンプールのごみ処理は楽であった。バルセロナには交差点の隅に大きなゴミ捨て箱が置かれている。だいたい大きな箱が三つくらい置かれているのである。それぞれの箱に分別して捨てることになっている。いつでも捨てられるので便利である。もっと便利であったのはクアラルンプール滞在の時であった。牧師館はコンドミニアムと言うマンションの中にあるのだが、一階に大きな鉄の箱が置いてあり、そこには何でも捨てることが出来る。分別しなくても、何もかも一緒なのである。鉄の箱はすぐにいっぱいになるようであるが、いつでも空の箱が置かれるようになっていた。
今回はごみ処理について書いているようであるが、本論はそうではない。先日、何時ものごみ回収の日に回収場所まで持っていった。その近くに一人の高齢の婦人がおられた。そして、私の顔を見るなり、「政次郎さんの息子さんでしょ」と言うのである。「よく似ているので、すぐわかりますよ」とも言われる。「政次郎」とは父であるが、父は案外世話好きで、いろいろな人の貢献をしていた。声をかけてこられた婦人のお連れ合いの仕事を紹介したり、住む家までお世話したというのである。91歳になられると言われる。父は1995年4月9日に97歳で亡くなっているので、その頃は82歳の頃である。父が元気なころは厚生年金の勧誘員を引き受けていた。その頃も厚生年金に入らない人が多かったようである。そのため金沢区内の知り合いを訪ねては勧誘していたようである。更に定年後は農作物栽培に力を入れており、収穫した野菜は結構皆さんに配って歩いたのである。そして、自分の畑で育てた源平桃の若木を近所の皆さんにさし上げている。今でも源平桃の花の季節になると、いろいろな家で花が咲いているのを見る。いちいちその家に源平桃のいわれを聞かないが、考えられることである。「お父さんにはお世話になりましたが、お母さんにもいろいろと優しくしてもらいました」と言われ、両親がご近所の皆さんに喜ばれていたことを誇りに思うのであった。そうなると「お父さんに似ている」と言う意味が重くのしかかる。「似ている」のは顔なのであり、父の働きではない。働きについては、何もしていないからである。
父はいつも町内の皆さんとお付き合いをしていた。この六浦には「睦会」と言うものがあり、特に高齢者の集いが開かれていた。民謡を歌う会、旅行を楽しむ会、これらの会に関わりながら、高齢の時代を楽しみつつ過ごしたのである。90歳を過ぎても大きな声で民謡を歌っていたのである。残されているアルバムは旅行の写真が多い。写真に写っている人の中には、今でも健在な人もいるであろう。高齢になりつつある皆さんは、昔のことを知っているわけで、道を歩いていても、「政次郎さんの息子」と思いつつ私を見ているのであろう。私としてはどなたであるか、わからないのであるが、皆さんは知っているのである。そういう中で、91歳の婦人のように声をかけてくださる方があるのである。
その「政次郎の息子」も先日の5月10日で75歳になっている。睦会の民謡の会や旅行クラブにも入らないで、もっぱらパソコンに向かっているのである。それはそれで現代における高齢者の生き方なのである。散歩もしているし、ハーモニカも吹いている。高齢時代を喜んでいるということ…。

父・政次郎の米寿、88歳のお祝い。

75歳の誕生日に。父に似ていると言われるが…。