鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

隠退牧師の徒然記<328>

隠退牧師の徒然記(2015年2月11日〜)<328>
2015年4月20日「しるしを付けたがり」


聖書の言葉
ユダヤ人はしるしを求め、ギリシャ人は知恵を探しますが、わたしたちは、十字架につけられたキリストを宣べ伝えています。
(コリントの信徒への手紙<一>1章22-23節)


 前回は「しるしを現す」とのテーマで記した。75歳以上の人が車の運転をする場合、高齢者マークを付けることを体験的に記している。あるいはバルセロナの体験で、地元の人の「しるし」として、買い物用のキャリーバッグを引いていれば、悪者に狙われない、なんて記した。しかし、2014年にバルセロナに滞在したときは、地元の人の様な顔になっていたので、地元の人の「しるし」であるキャリーバッグは用いなかった、なんて記している。こうして自分自身を何らかの「しるし」にするのであるが、自分の存在を示すために「しるし」を付ける存在がいる。良い例ではないが、犬がやたらにオシッコを出すのは、自分の縄張りをつけておくことなのである。それとは異なるが、人間があたかも自分の存在を示すために「しるし」をつけている。最近、神社仏閣、重要文化財等に油や液体をかけるという醜い出来事が起きている。どうしてこの様なことをするのか。犬と同じように、自分の存在を示したいのであろう。
 油や液体もかけられれば迷惑であるが、いたずら書き、落書きほど迷惑なものはない。外国で結構見ているので、日本の状況を考えてみる。そのつもりで散歩のおりにカメラを持参する。意外と落書きがないのである。道沿に変電箱のようなものが置かれているが、ちょっとした落書きがあった。さらに廃屋と思われる家に落書きがあったが、他には落書きなるものは見なかった。京急線のガード下のコンクリートの壁に、子供たちが楽しい絵を描いている。これは近くの小学校の子どもたちが描いたものであるが落書きではない。学校が当局と相談して子供たちに書かせたのであろう。楽しい絵を見ながら、落書き教育に結びつかないか、なんて考えたりする。公共の場に絵を描いて良いことを教えられたのだから。
 私が住んでいるところは住宅街であり、落書きの対象にはならないのであろう。この界隈は落書きの場がないのかもしれない。場所によってはかなりの落書きを見ることになる。東京に行き、電車に乗っていると、落書きを車窓に見ることになる。しかし、日本の場合は少ないと思っている。それに対していくつかの外国を見ているが、結構いたずら書き、落書きがある。バルセロナの店のシャッターには結構落書きがあるところもある。落書きをされても、修復することもなく、そのままの状態が多いのである。修復しても、また同じように落書きされるのであきらめているのかもしれない。バルセロナの公園の側に古いマンションが建っている。ふと見ると、いろいろな人がベランダに出たり、窓から顔を出してお隣さんと語り合ったり、ベランダで絵を描いたりしている人がいる。楽しそうな住人の姿が見られる。実在の芸術家、作家、政治家であるそうだ。ピカソもいるとか。しかし、良くみると、これらは絵なのである。結構高い建物の壁面全体が絵になっている。これを落書きとは思えない。むしろ、小学校の子供たちがガード下に楽しい絵を描いているように、ビルの壁面を楽しく見せるための芸術作品なのである。よくもこんな高いマンションに描いたものよと驚嘆する。腕を振るって芸術作品に仕上げているのである。
 マレーシア・クアラルンプールで過ごした時を思い出しているが、ほとんど落書きは見かけなかったと思う。その変わり張り紙の多さに驚いたほどだ。張り紙は「案内・広告」であるが、小さな紙切れがいっぱい貼られているのである。特に公衆電話の場や郵便ポストに貼られている場合が多い。日本の昔も、公衆電話ボックスにはたくさんの張り紙があった。今はほとんどの人が携帯電話を持ち、公衆電話ボックスを利用しなくなっているので、張り紙はないと思う。張り紙は広告宣伝であり、落書きとは異なる。落書きはペンキで描くので、それなりに塗料を買わなければならない。落書きをするにもお金が必要なのだ。そうすると落書きがある街は豊かなのか。その様なことはないと思うが。時々、不思議に思うのは外国で見る落書きと日本で見る落書きが似ているということである。まさか同じ人が諸外国で落書きして回っているのだろうか。落書きは、なんとなくふくらみがあるような描き方をするが、日本でも外国でも同じようなタッチなのである。
 私達の生活は、何事も十字架が「しるし」であると聖書は示している。この「しるし」をあちらこちらに「証し」しなければならないのである。



電車のガード下に子供たちが楽しい絵を描いているが…。



日本でも描かれている廃屋の落書き。



バルセロナの街で。星子と羊子の彼・イグナシオさんが
ポスターをを見ているが、その隣は落書きである。
日本の落書きと描き方が似てるようだ。
2014年10月。



バルセロナの公園の横にあるマンション、そのビルの壁面に描かれた絵。落書きではない。