鈴木伸治の徒然記

永年の牧師、園長を隠退し、思い出と共に現況を綴ります

バルセロナ滞在記「聖誕の門を仰ぎ見つつ」<25>

バルセロナ滞在記(2014年10月21日〜)<25>
2014年11月19日「とにかく喜んでいただけるなら」



 今日もまた羊子のピアノ・リサイタルが開かれた。旧市街の医師会館にある会場である。そこは先日、羊子たちの結婚式が行われ、お祝いの会は旧市街のレストラン「ネイラス」で行われたが、そのすぐ近くの場所であった。今回は比較的早い開会で午後7時からである。この付近は駐車する場所がなく、羊子夫婦と我々夫婦はタクシーで行くことにしたのである。タクシーの初乗りは2.1ユーロである。日本円で言えば300円くらいである。日本の場合は、最初から730円も支払うので、随分と違うと思う。もっとも距離数の計算もあるようだが、それにしても安いと思う。2013年3月から三ヶ月間、マレーシアのクアラルンプール日本語キリスト者集会のボランティア牧師として過ごしたが、タクシー料金は安いと思った。ただ、運転手のマナーが悪く、メーターを使わないで、料金を示す悪徳商法が多かったということである。バルセロナにしてもマレーシアにしても同じであるが、タクシーのドアーは自分で開ける。日本のように運転手が自動装置で開けるのではない。タクシーを止めて、ドアーが開くまで待っているということはないのである。少し荷物が多くてトランクに入れたりすると、それなりにチップを払うのである。日本でも多いが、バルセロナのタクシーの多さには驚くほどである。タクシーは横のドアー部分が黄色いので、タクシーはすぐに分る。日本の場合は、タクシーでもわかりにくいこともある。
 さて、会場には6時には着く。早めであるが練習をしたり、準備するにはこのくらいの余裕が必要である。今回はiPadでビデオを撮ることにしている。そのため二階席の正面あたりから撮影することにし、その設定もするのであった。会場は350名くらいの座席がある。ほぼ満員であった。午後7時になってリサイタルが始まる。先日のサンタコロマにおけるプログラムと同じで、第一部は着物を着ての演奏である。第一部は羊子の作曲を含めて日本の曲を演奏するので着物を着ての演奏であった。そして10分くらいの休憩後はスペイン物の重い曲をドレスを着て演奏する。こうして開かれたリサイタルは午後9時頃には終了する。例によって皆さんの拍手喝采をいただき、アンコールにも応え、皆さんが喜びつつ帰っていくのであった。終了後、時間も食事の時間にもなっているが、早く帰って、家でくつろぎながら食べることにして、タクシーで帰ってきたのである。タクシーの中で、それとなくどれだけの謝礼をいただいたのか聞く。そしたらギャラはなしということであった。あれだけの演奏をして、しかも200人は来場し、皆さんに喜ばれたのにギャラはなしとは、なんとなく合点がいかない。今回のリサイタルは羊子と親しくしている老婦人に依頼されてのことで引き受けたという。老婦人が属している会は会員制であり、その会の企画であると言うが、予算がないそうだ。会員はほとんどが高齢者で、会費を払っているが、会場費とか準備費で、ギャラまでは出せないのである。それでリサイタルを企画するのだから、たいしたものである。羊子もその会の事情を知っており、また親しくしている老婦人の依頼でもあり、引き受けたのであった。その老婦人は羊子の結婚式にも列席してくれている。しかし、その後、心臓を悪くして一時は入院したが、今は自宅静養ということであり、だからリサイタルには来られなかったのである。中心となっている人が来られないので、羊子も寂しい思いであった。
 ギャラがあるからないから、それでコンサートを引き受けるのではない。皆さんが喜んで下さるなら、たとえギャラなしでも引き受ける姿勢を持っているのである。2013年11月に帰国していくつかの場でリサイタルを開いたが、チャリティーであり謝礼等は考えてはいない。皆さんが喜んで下さるなら、喜んで演奏しますとの姿勢なのである。その様な羊子の姿勢を喜んでいる。我が家の三番目の子供の優はカイロプラクターである。この子も時々無料で整体をしてあげたりしている。二番目の子供の星子は高齢者介護の仕事をしているが、この仕事も皆さんに喜んでいただく仕事なのである。こうして我が家の子供たちが、とにかく皆さんに喜ばれるならば、ギャラなしで取り組む姿勢を持っていることを、親として感謝している。
 羊子は着物姿の演奏をビデオに収めたかった。それでiPadにより二階席から収録したのである。しかし今までビデオ撮りしたことが無い。だいたいは分かっているのでスイッチを入れたのであるが、どうも操作を誤ってしまったようだ。結局、羊子の着物姿のピアノ演奏はビデオに収録できなく、皆さんにお見せすることができないのは、残念というより申し訳なく思っている。それからは一生懸命にビデオ撮りの学習をしている。「すぐわかる40歳からのiPad」なる本を手元に置いているのであるから、いつもやり方を覚えなければならないのであるが。どうも新しく覚えるということが億劫になっているのである。何しろ40歳ならず75歳なのだから。



着物姿で日本の曲を演奏する羊子。



今度はドレスでスペインの曲を演奏する。



羊子のCDにサインをする。



医師会館のコンサート会場の紋章。